研究実績の概要 |
本研究は高病原性ウイルスの内、エボラウイルスそしてラッサウイルスを含むアレナウイルスのウイルス粒子形成に関与するマトリックスタンパク質の細胞内における挙動を分子レベルで明らかとするものである。エボラウイルスはVP40、アレナウイルスはZタンパク質がマトリックスタンパク質として機能し、粒子形成において中心的な役割を果たす。 我々はこれまでにエボラウイルスVP40による粒子産生を阻害する新規低分子化合物を同定して報告し (Urata et al., Antiviral Research, 2022)、この新規低分子化合物に特異的に結合し得る細胞内タンパク質としてミトコンドリア関連タンパク質2つを同定した。同定した新規低分子化合物の293T細胞のミトコンドリア膜電位への影響はないこと、アポトーシス誘導にも影響しないことを確認した。同定した2種類のミトコンドリア関連タンパク質の内1つに対するsiRNA処理や2番目ミリスチル化アミノ酸の変異体の過剰発現ではVP40による粒子産生に影響を与えなかった。 我々は複数のアレナウイルスZタンパク質がRab10、Rab13やRab25といった細胞内小胞輸送を制御する低分子量GTP結合タンパク質との細胞内共局在を観察している。これらのRabのアレナウイルスZによる粒子産生への影響を検討するため、昨年に引き続きRab関連因子の発現プラスミドクローニングを進めている。 アレナウイルスのZタンパク質はその細胞内複製においてゲノム複製抑制、そしてこれに引き続き粒子形成と2つの役割を経時的に使い分けるが、それぞれに関与する宿主因子の詳細は不明である。Zと近接する宿主因子を網羅的に解析することを目的にSNAPタグ付加組換えLCMVの作成を進めたが、最終的に作成することができなかった。
|