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2021 年度 実施状況報告書

新規免疫逃避機構解明による希少腎細胞がんの治療戦略創出に向けた基盤研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K07101
研究機関熊本大学

研究代表者

門松 毅  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (90555757)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード免疫逃避 / ANGPTL2 / 腎細胞がん
研究実績の概要

ANGPTL2によるMHC-I発現抑制機構の解明研究での準備研究の成果として、我々はANGPTL2 KDにより転座型腎細胞がん(tRCC)モデルマウス由来初代がん細胞株でのIFNg誘導性MHC-I発現が増強されることを既に明らかにしていた。そこで、ANGPTL2をノックアウトした初代がん細胞株を樹立し、ANGPTL2とIFNgシグナルのクロストークや階層性を検討した。その結果、ANGPTL2をKOした細胞では、IFNgシグナルによるSTAT1活性化には変化を認めないが、STAT1の標的遺伝子であるIRF1のタンパク質発現が亢進していることを見出した。さらに、ANGPTL2シグナル伝達に寄与する受容体を検討したところ、初代がん細胞株ではANGPTL2受容体として機能することが報告されている3種類の分子のうちインテグリンa5b1とCD146が発現しており、これら受容体のKO細胞では、ANGPTL2をKOした場合と同様にIFNgシグナルに対する感受性が亢進し、IRF1タンパク質発現が増加することが明らかとなった。また、ANGPTL2によるMHC-Iの発現抑制が、がん細胞の免疫逃避に寄与しているか検討するため、トリ卵白アルブミン(OVA)を恒常的に発現するANGPTL2 KOマウス初代がん細胞を樹立し、OT-I細胞と共培養することでkilling assayを実施した。その結果、ANGPTL2をKOした初代がん細胞株ではコントロール細胞株に比べて有意に細胞の生存率が低下した。以上より、ANGPTL2はがん細胞におけるIFNgシグナルに対する感受性を低下させることでMHC-Iの発現を抑制すること、そのメカニズムとしてANGPTL2シグナルがIRF1のタンパク質発現を抑制すること、さらに、ANGPTL2によるIFNgシグナルに対する感受性低下作用が、免疫逃避に寄与していることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度における研究成果として、ANGPTL2シグナルが、がん細胞におけるIFNgシグナルに対する感受性低下に関わっていること、がん細胞におけるIFNgシグナルに対する感受性低下にANGPTL2受容体としてインテグリンa5b1とCD146が寄与していること、ANGPTL2シグナルが実際にがん細胞におけるMHC-I発現抑制を介した免疫逃避に関わっていることが示されるなど、本研究は順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

今後、インテグリンa5b1とCD146を介したANGPTL2シグナルがどのようにしてIFNgシグナルに対する感受性を変化させるかその分子機構を詳細に検討するとともに、野生型及びCKOモデルマウスの腎組織を用いて免疫染色やフローサイトメトリー解析を行い、tRCC病態進展とANGPTL2を介した免疫逃避との関連を検討する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 図書 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Stroma-derived ANGPTL2 establishes an anti-tumor microenvironment during intestinal tumorigenesis.2021

    • 著者名/発表者名
      Horiguchi H, Kadomatsu T, Miyata K, Terada K, Sato M, Torigoe D, Morinaga J, Toshiro Moroishi, Oike Y.
    • 雑誌名

      Oncogene

      巻: 40 ページ: 55-67

    • DOI

      10.1038/s41388-020-01505-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The lncRNA Caren antagonizes heart failure by inactivating DNA damage response and activating mitochondrial biogenesis.2021

    • 著者名/発表者名
      Sato M, Kadomatsu T, Miyata K, Warren J, Tian Z, Zhu S, Horiguchi H, Makaju A, Bakhtina A, Morinaga J, Sugizaki T, Hirashima K, Yoshinobu K, Imasaka M, Araki M, Komohara Y, Wakayama T, Nakagawa S, Franklin S, Node K, Araki K, Oike Y.
    • 雑誌名

      Nat Commun

      巻: 12 ページ: 2529

    • DOI

      10.1038/s41467-021-22735-7

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Vaccine targeting ANGPTL3 ameliorates dyslipidemia and associated diseases in mouse models of obese dyslipidemia and familial hypercholesterolemia.2021

    • 著者名/発表者名
      Fukami H, Morinaga J, Nakagami H, Hayashi H, Okadome Y, Matsunaga E, Kadomatsu T, Horiguchi H, Sato M, Sugizaki T, Kuwabara T, Miyata K, Mukoyama M, Morishita R, Oike.
    • 雑誌名

      Cell Rep Med

      巻: 2 ページ: 100446

    • DOI

      10.1016/j.xcrm.2021.100446

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Angiopoietin-like protein 2 decreases peritoneal metastasis of ovarian cancer cells by suppressing anoikis resistance.2021

    • 著者名/発表者名
      Takeshita Y, Motohara T, Kadomatsu T, Doi T, Obayashi K, Oike Y, Katabuchi H, Endo M.
    • 雑誌名

      Biochem Bioph Res Commun

      巻: 561 ページ: 26-32

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2021.05.008.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [図書] Geriatric Medicine、 エネルギー代謝の変容・破綻と加齢疾患2021

    • 著者名/発表者名
      門松 毅、尾池雄一
    • 総ページ数
      689-692
    • 出版者
      ライフ・サイエンス社
  • [図書] 日本抗加齢医学会雑誌 アンチ・エイジング医学、 抗慢性炎症とミトコンドリア恒常性による健康長寿戦略2021

    • 著者名/発表者名
      門松 毅、尾池雄一
    • 総ページ数
      40-45
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [図書] 別冊Bio Clinica 慢性炎症と疾患、老化と慢性炎症、老化における慢性炎症とサルコペニア2021

    • 著者名/発表者名
      門松 毅
    • 総ページ数
      52-56
    • 出版者
      北隆館
  • [備考] 熊本大学大学院生命科学研究部 分子遺伝学講座

    • URL

      http://www.kumamoto-u-molgene.jp

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公開日: 2022-12-28  

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