研究課題/領域番号 |
21K07202
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
福村 和宏 藤田医科大学, 医科学研究センター, 講師 (80622117)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | mRNA前駆体スプライシング / 抗がん剤耐性 / SPF45 / SAP30BP |
研究実績の概要 |
本研究は、スプライシング制御因子SPF45の過剰発現が引き起こす抗がん剤耐性獲得のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 (1)SPF45によってスプライシング制御される抗がん剤耐性に寄与する候補遺伝子の同定を試みる。SPF45遺伝子の発現抑制を行なったHeLa細胞をシクロヘキシミド(NMD阻害剤)で処理し、RNA-Seqを行い、スプライング様式の変化を調べる。この解析により、NMDにより分解されて検出できなかった遺伝子のスプライシングの変化を検出できると期待した。しかし、SPF45遺伝子のノックダウンとシクロヘキシミド処理は細胞へのダメージが大きく、実験が困難であった。ノックダウン後の培養時間、シクロヘキミド処理の濃度や時間の検討も行ったが、RNA-Seqを正確に行える量のRNA回収が難しく断念せざるを得なかった。 (2)スプライシング反応において、イントロン/エキソン境界である3’スプライスサイトはU2AFと呼ばれるスプライシング因子によって認識される。しかし、SPF45制御下の短いイントロンのスプライシングは、U2AFを必要としない。そこで、SPF45によってスプライシング制御されるイントロンの3’スプライスサイト認識機構も併せて明らかにすることを試みた。その結果、SPF45の相互作用因子としてSAP30BPという因子を同定した。SAP30BPは、スプライシング反応を触媒するスプライソソームに含まれていることがわかっているが、その機能はわかっていない。SAP30BP遺伝子の発現抑制を行なったHeLa細胞とSPF45遺伝子の発現抑制を行なったHeLa細胞のRNA-seqを行ない、スプライシングが阻害されるイントロンを比較すると、そのほとんどが共通であった。このことから、SAP30BPはSPF45と協調して、短いイントロンのスプライシングを制御していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん細胞で過剰発現したSPF45が、下流の短いイントロンを持つがん関連遺伝子のスプライシングを亢進することで、多種類の抗がん剤耐性を獲得するのではないかと考えられる。これは、現在進行中である抗がん剤耐性を持ったSPF45の過剰発現株の構築と、そのトランスクリプトーム解析によって明らかにする事ができるであろう。 さらに、本研究で同定したSPF45の相互作用因子SAP30BPはSPF45と協調してスプライシング制御する事から、SAP30BP自身も抗がん剤耐性遺伝子なのではないかと考えられる。我々は、SAP30BPを過剰発現させたHeLa遺伝子でも抗がん剤耐性を獲得できるかどうか解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)SPF45の下流にあるターゲット遺伝子同定のために、RNA-Seqの実験計画を以下のように変更した。前述したように、がん細胞ではSPF45の過剰発現により、抗がん剤耐性が獲得されている。そこで、まず、HeLa細胞のSPF45の過剰発現株を創出する。その細胞にビンクリスチン処理を行ない、耐性を獲得できた細胞のRNA-Seqを行ない、スプライシングが変動する遺伝子や発現量が顕著に上昇する遺伝子群の同定を行う。現在、HeLa細胞にFlagタグ付きのSPF45を過剰発現株を作製中である。 (2)SAP30BPはSPF45と協調して、短いイントロンのスプライシングを制御していると考えられる。そこで、さらに、SAP30BPとSPF45によるスプライシング制御メカニズムの解明を目指す。まず、SAP30BPとSPF45のリコンビナントタンパク質を精製し、相互作用を調べ、まずは直接結合するかどうか明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の経費はほぼ使用しているが、残額は次年度の試薬購入に使用する予定である。
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