研究課題/領域番号 |
21K07229
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
田中 稔之 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (30217054)
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研究分担者 |
大野 喜也 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (40509155)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 癌免疫治療 / IL-18 / 免疫チェックポイント / I型免疫応答 / 腫瘍ネオ抗原 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬は担癌宿主のT細胞を抑制状態から解放して強い抗腫瘍効果を発揮するが、治療効果は未だ限定的である。研究代表者らは、1)IL-18が免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を増強し特徴的なNK細胞が必須の役割を果たすこと、2)免疫チェックポイント阻害薬とIL-18の併用治療に対する抵抗性腫瘍に、DNAミスマッチ修復の鍵分子であるMLH1欠損とPD-L1欠損を導入すると、免疫感受性に転換できることを見出した。本研究は、【1】IL-18が誘導するI型免疫応答と免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果の増強機構の解明、【2】DNA修復阻害による腫瘍ネオ抗原の生成と免疫チェックポイント感受性の附与機構の解明、【3】I型免疫応答と腫瘍ネオ抗原を標的とした免疫チェックポイント阻害治療抵抗性の克服を目的としている。 2021年度は、まずIL-18による免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果の増強機構について解析した。ゲノム編集法によりβ2ミクログロブリン(β2M)を欠損する腫瘍細胞を作製しIL-18とICIによる併用治療に対する感受性を検討した結果、野生型細胞でみられるIL-18によるICI治療効果の増強作用が著しく減弱していることが示された。IL-18によるICIの治療効果の増強作用には治療早期に出現する活性化NK細胞が重要な役割を果たしているが、最終的な腫瘍拒絶にはキラーT細胞が不可欠であることが示された。また別の解析から、IL-18はICIによる治療過程で、IL-12依存性にXCR1+ 樹状細胞を腫瘍局所に動員することが示された。これらの結果より、IL-18が自然免疫で働くNK細胞と樹状細胞を介してI型免疫応答を促進し、キラーT細胞による抗腫瘍免疫応答を増強することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、主としてIL-18による免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果の増強機構について解析し、IL-18によるICIの治療効果増強作用には治療早期に出現する活性化NK細胞に加えて、キラーT細胞が最終的な腫瘍拒絶に不可欠であることが示された。また、IL-18が自然免疫で働くNK細胞と樹状細胞を介してI型免疫応答を増強することが示唆され、IL-18によるICIの治療効果の増強作用における自然免疫系と適応免疫系の連携機構の一端を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、主としてIL-18による免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果の増強機構について解析し、IL-18が自然免疫系と適応免疫系が連携するI型免疫応答の促進を通じてICIの治療効果を増強することが示された。今後は、IL-18によるICIの治療効果の増強過程における自然免疫系と適応免疫系の連携機構の詳細を追求し、IL-18による抗腫瘍効果の増強作用を強化する薬物の特定などに取り組む。また、DNA修復阻害による腫瘍ネオ抗原の生成や汎用される医薬品がICIの治療効果に及ぼす影響の解析などを通じて、ICIの抗腫瘍効果の増強と治療抵抗性の克服に資する研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、主としてIL-18による免疫チェックポイント阻害薬の治療効果増強におけるI型免疫応答の促進機構に関する研究を実施した。計画はおおむね予定通りに進行しているが、研究期間中に実施する臨床研究(後ろ向き調査研究)の立案などに時間を要し、全体としてやや遅れがあり次年度使用額が生じた。2022年度はI型免疫応答と腫瘍ネオ抗原を標的とした免疫チェックポイント阻害薬の治療効果の増強を目的とした解析にむけ、本予算を効率的に執行する計画である。
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