研究実績の概要 |
我が国の孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sporadic Creutzfeldt-Jakob Disease: sCJD)の中で85%を占めるMM1型の症例14例についてアルカリ製剤(CAC717)に対する反応性を検証した。sCJD患者由来の脳乳剤をCAC717で処理した後、ウエスタンブロット法で異常型プリオンタンパク(PrPSc)を検出した。3F4抗体(エピトープ 109-112)を用いたウエスタンブロット法で、ほとんどの症例のPrPScが90%程度減少していたが、50%程度しか減少しない症例が1例発見された。この結果から、病理所見やウエスタンブロットでのバンドパターンによる病型分類が同じでもプリオンの性状が異なる(異なる株のプリオン)ことがあるということを示唆している。 そこで本年度はこれらのsCJD症例のうち4症例の脳乳剤(うち1例はアルカリ製剤への反応性が異なる症例)をヒトーマウスのキメラプリオンタンパクを発現するノックイン(KiChM)マウスに接種して、各症例の50% Lethal Dose (LD50)の算出を試みた。マウスに接種した各sCJDの脳乳剤の濃度は0.001, 0.01,0.1,1.0%である。 現在、1.0%の脳乳剤を接種したマウスはすべて死亡しているが、接種したsCJD脳乳剤の症例ごとの生存期間の明確な違いは認められていない。今後、低濃度の脳乳剤を接種したマウスの生存期間、死亡率を明らかにする、解剖したマウスの免疫染色やウエスタンブロットで違いが認められるか検証する。また、解剖したマウスの脳乳剤をアルカリ製剤で処理して、接種したsCJD脳乳剤と同様の反応性を示すか検証する予定である。
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