研究課題/領域番号 |
21K07318
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
野島 順三 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30448071)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抗リン脂質抗体症候群 / 抗カルジオリピン抗体 / 抗β2-グリコプロテインⅠ抗体 |
研究実績の概要 |
抗リン脂質抗体症候群(APS)は,血中に抗リン脂質抗体が出現し、動・静脈血栓症や妊娠合併症などを引き起こす自己免疫性血栓塞栓性疾患である.APS診断基準に採用されている抗リン脂質抗体は,抗カルジオリピン抗体(aCL)および抗β2-グリコプロテインⅠ抗体(aβ2GPI)のIgG/IgMクラスであり,近年,これら4種類の抗リン脂質抗体を同時に測定できる自動分析装置搭載試薬【Automated assay】も保険収載され普及しつつある.本研究では,共通の統計学的手法を用いた各種抗リン脂質抗体測定法のカットオフ値の設定並びにmethod comparisonを行った.2社のELISA(MBL社・INOVA社)及び3社の自動分析装置搭載試薬(MBL社・INOVA社・Thermo Fisher社)にて健常人血清の抗体価を測定し,各アッセイの99/97.5パーセンタイル値を設定した.さらに,APS/non APS患者の抗体価を測定し,ROC曲線にて感度=特異度となるカットオフ値並びに診断能(AUC)を算出するとともに,アッセイ間での抗体価の相関を検討した.その結果,99パーセンタイル値よりもカットオフ値に近い97.5パーセンタイル値を用いることでAPS/non APS患者における抗体陽性率が増加した.一方でアッセイ間での判定一致率はやや低下したが,一致率が極端に増減したアッセイはなかった.またELISA/自動分析装置搭載試薬間での抗体価の相関は概ね良好で,同等のAPS診断能を示したことから複数種類の抗体を同時に測定できる自動分析装置搭載試薬は,抗リン脂質抗体検査の標準化および普及に極めて有用であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の計画は、産学連携研究にて臨床的に有用性の高い抗リン脂質抗体を複数種測定できる自動検査システムの標準化であり,従来のELISAと自動分析装置搭載試薬間での抗体価の相関は概ね良好で,同等のAPS診断能を示したことから複数種類の抗体を同時に測定できる自動分析装置搭載試薬は,抗リン脂質抗体検査の標準化および普及に極めて有用であることが確認されたので,概ね順調と考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は、自動検査システムにより陽性抗体の種類・抗体価・酸化ストレス度から患者毎にリスクの高い合併症のパターンを予測できる新たなAPS検査診断法の確立を目指すと共に,申請者らが提唱したAPSの病態機序(仮説)である”Cell-mediated coagulation induction”に基づき、患者血漿から単離・精製した各種抗リン脂質抗体(IgG)と我々が開発したヒト動脈(静脈)内皮細胞・単核球・血小板の共培養(接触系・非接触系)実験系を用いて、抗リン脂質抗体による血栓形成作用を動脈血栓と静脈血栓の差異に着目して系統的に検討する.
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