研究課題/領域番号 |
21K07522
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小原 知之 九州大学, 大学病院, 講師 (20623630)
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研究分担者 |
吉田 大悟 福岡看護大学, 看護学部, 准教授 (10596828)
中尾 智博 九州大学, 医学研究院, 教授 (50423554)
二宮 利治 九州大学, 医学研究院, 教授 (30571765)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | sTREM2 / 睡眠時間 / 認知症 / 有病率 / 炎症 |
研究実績の概要 |
sTREM2は脳内炎症におけるミクログリア活性化の指標であり、認知症の発症前後で最も髄液中や血液中で上昇することが知られている。また、短時間睡眠と長時間睡眠は認知症発症の危険因子であり、その機序としてアミロイドβの排泄障害だけでなくミクログリアの機能低下やその神経毒性作用が密接に関連している。つまり、sTREM2と睡眠時間が認知症発症をもたらす機序にはミクログリアという共通点がある。しかし、血清sTREM2と睡眠時間が認知症発症に与える影響を複合的に検討した研究はない。そこで、認知症のない60歳以上の久山町住民1,230人を10年間前向きに追跡した成績を用いて本課題について検討した。追跡開始時の血清sTREM2は中央値で2分位し、睡眠時間は5.0時間未満、5.0-7.9時間、8.0時間以上の3群に分類した。 その結果、血清sTREM2低値群では、認知症の発症率は5.0-7.9時間睡眠群と比べて8.0時間以上睡眠群でのみ有意に上昇した。一方、血清sTREM2高値群では、5.0-7.9時間睡眠群を基準にすると、認知症の発症率は5.0時間未満睡眠群と8.0時間以上睡眠群のいずれも有意に上昇した。これらの関連は性、年齢、学歴、収縮期血圧、降圧薬の服用、糖尿病、血清総コレステロール、BMI、心電図異常、脳卒中既往歴、喫煙、飲酒、運動習慣、高感度C反応性蛋白質を調整しても変わらなかった。本研究により、睡眠時間が認知症発症に与える影響は血清sTREM2レベルによって異なることを明らかにした。 さらに、我々は福岡県久山町在住の高齢住民を対象に2021年5月から認知症、軽度認知障害の悉皆調査を行うために久山町役場、および久山町住民への周知を行った。本調査は会場調査に加え自宅や入居施設の訪問調査も実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
睡眠時間が認知症発症に与える影響は炎症のレベルによって異なる可能性があることを明らかにすることが出来た。また、2022年度に認知症と軽度認知障害の悉皆調査を実施するための準備も順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
2022年5月末から福岡県久山町在住の65歳以上の高齢住民を対象とした認知症および軽度認知障害の悉皆調査を実施する。 また、認知症発症の危険因子の探索を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
認知症、軽度認知障害の悉皆調査の準備を行うための人件費が発生しなかったために次年度への使用額が生じた。
(使用計画) 令和4年5月より65歳以上の久山町高齢住民を対象とした認知症、軽度認知障害の悉皆調査を実施するために必要な人件費を中心に助成金を適正に使用する予定である。
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