研究課題
現在当初の研究計画に従い、順調に研究を遂行している。その結果、放射線による免疫応答誘導のメカニズムについて2報の国際誌に投稿し、採択された。また、第60回日本癌治療学会、第59回日本放射線腫瘍学会生物部会学術大会、European Society for Radiotherapy & Oncology (ESTRO) にて同内容を発表している。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度の目的として、放射線誘導免疫応答におけるRNA virus sensor pathwayの関与と、放射線により誘導され、RIG-Iに結合するRNAの同定を目指した。肺非小細胞癌細胞株A549を用い、8Gy/1frの放射線照射に対してSTAT1リン酸化やIFN-Stimulated Response Elements (ISRE)の活性化が生じることを確認し、DIAリン酸化プロテオーム解析により免疫応答トリガーの制御機構を探索した。その結果、RIG-IをはじめとしたRNA virus sensor pathwayのリン酸化が亢進していることを明らかにした。また、RNA sensor ligandの探索の目的でTotal RNA sequence, RNA Immunoprecipitation Chip (RIP) Assayを行った結果、8Gy照射後96hでLong terminal reperts (LTRs)を含むTransposal Elementsが増加し、RIG-Iに結合していることが明らかとなった。
これまでの研究で、A549におけるLTR-RIG-Iを介した放射線誘導免疫応答メカニズムの存在が示唆されている。今後はRIG-I, MAVS, MDA5等RIG-I pathway関連遺伝子のノックアウト細胞を用いてこれらの遺伝子の関与について詳細に調べる。さらに細胞株の免疫応答以外にも、周囲の免疫細胞に与える影響をヒトPBMC細胞を用いた走化性アッセイ、transcriptome解析を用い、癌細胞が誘導するLTR-RIG-Iが誘導するIFN応答が、周囲の免疫細胞を活性化することを証明する。最後にin vitro実験で機能が証明された放射線誘導RNA virus sensor pathwayが実際に放射線治療を受けている患者がん組織で活性化することを検証する。同意を得た患者がん組織を用いて空間的transcriptome, single cell RNA sequencingを用いて放射線治療中がん組織中のLTR-RIG-I pathwayの活性化を評価する。
キャンペーン価格などの利用により一部予算が削減できたため
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
Cancer Science
巻: 113 ページ: 1352-1361
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巻: - ページ: -
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Biochemical and biophysical research communications
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