研究課題
【背景】子宮頸癌の治療法は、従来の手術療法、放射線治療、化学療法に加え、PD-L1などの免疫チェックポイント分子を標的にした薬剤の併用療法が注目されているが、その生物学的効果は未だ不明な点が多い。また子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(以下HPV)の持続感染が発生母地になることが知られており、HPV関連腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害薬の働きに関する研究も行われている。過去に我々は、放射線治療が子宮頸癌のPD-L1の発現を誘導することを明らかにした。そこで、術前、術後放射線治療の有無、あるいは術前、術後化学療法の有無がPD-L1を含む免疫に関わる様々な蛋白発現にどのような影響を与えるかを明らかにし、さらにHPV関連性や予後に関する調査を行う。【対象と方法】当院で術後放射線治療を施行した子宮頸癌症例について追跡調査を行い、臨床的予後因子を明らかにするとともに、各症例における治療前の子宮頸癌生検検体及び手術検体における、腫瘍免疫関連タンパクであるPD-L1の発現とCD8陽性T細胞やFoxP3陽性細胞などの浸潤の程度をスコア付けを行い評価し、予後との関連を解析した。【結果】①生検標本において、腫瘍細胞のPD-L1の高発現群は、低発現群に比べ、有意に、予後が良好であった。②生検標本において、間質に存在する免疫細胞のPD-L1の高発現群は、低発現に比べ、有意に、予後が良好であった。③生検標本において、腫瘍細胞のFoxP3の高発現群は、低発現に比べ、有意に、予後が良好であった。④年齢や、腫瘍のスタージなど臨床因子を含めた多変量解析では、腫瘍細胞のPD-L1の発現が有意な予後因子であった。【考察】子宮頸癌の術後放射線療法の治療成績に、腫瘍免疫が影響しているしている可能性を示唆する結果が得られた。腫瘍免疫に関係する他の因子でも解析を行う。
2: おおむね順調に進展している
研究目的の一つとして、生検標本を使用した免疫組織染色による放射線治療効果予測法の確立を目指すことがあるが、前年度の口腔がんや今年度の子宮頸がんで、放射線治療成績に、腫瘍免疫の関与を示唆する結果が得られた。
生検標本を使用した免疫組織染色による放射線治療効果予測法の確立ための研究を他の癌でも行う。この研究と並行して、リンパ細胞のDNA-PK活性の測定による放射線障害予測法の確立の研究も行う。
すでに研究室にあった消耗品を使用して研究を行ったため、残額が生じた。翌年度経費では解析用備品の購入、研究用消耗品の購入、情報収集を兼ねた学会参加費用等に使用する予定である。
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