研究課題/領域番号 |
21K07874
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
石崎 優子 関西医科大学, 医学部, 教授 (20411556)
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研究分担者 |
吉田 誠司 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (20815865)
菅 俊光 関西医科大学, 医学部, 教授 (40288816)
柳夲 嘉時 関西医科大学, 医学部, 助教 (90610353)
早川 潔 大阪公立大学工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20325575)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 起立性調節障害 / リカンベント運動療法 / 心肺負荷試験 / 運動耐容能 / Heart Rate Recovery |
研究実績の概要 |
【背景】起立性調節障害(orthostatic dysregulation; OD)に対して運動療法として、先に海外論文のナラティブ・レビューにより、『心拍数を指標とした最大酸素摂取量70%程度の運動。臥位もしくは半臥位から開始。構成はウォームアップ、運動、クールダウンからなる。運動耐性が上がれば、運動強度・時間を上げる』運動が推奨されることを報告した。2022年度は、この計画に沿ってOD児が臥位で行う(リカンベント)自転車エルゴメーター運動の効果を心肺負荷試験(CPX)と新起立試験により評価した。 【方法】対象は2020年8月~2022年7月に関西医科大学総合医療センター小児科に入院し、4週間の運動療法を行った中学1~3年のOD児24名(男児18名)。1日1回30分の自転車エルゴメーター運動をベッド上臥位で開始。3週間目から半臥位とし、運動耐性が上がれば強度を上げて4週間継続した。入院時と運動療法終了後にCPXと新起立試験を実施し、運動療法前後のデータを比較検討した。 【結果】運動療法の前後で、CPXの安静時心拍数(86.8vs80.9, p=.016), 拡張期血圧(68.1vs52.8, p=.005), 負荷運動継続時間(10.6vs11.8, p=.000), 最大酸素摂取量(31.5vs34.5, p=.001)、Heart Rate Recovery(HHR)(27.3vs30.6, p=.035)、新起立試験の心拍増加(51.7vs45.7, p=.016)に有意な改善を認めた。 【考察】4週間の臥位での自転車エルゴメーター運動療法により、OD児のCPXにおける安静時心拍数が減少し、運動耐容能が改善するとともに、副交感神経機能活動を示すHHRの回復が見られ、起立試験で起立耐性の改善を認めた。臥位で行うエルゴメーター運動療法はOD児の起立耐性と自律神経調整機能を改善すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、重症起立性調節障害児に対する最も有効な運動療法のあり方を4週間の入院治療の前後の各種指標の比較により実証することを目的としている。 しかしながら、実施施設である関西医科大学総合医療センターは大阪府の新型コロナウイルス感染症の重症患者治療の中核病院となっており(https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20220728/2000064334.html)、流行し大阪府の医療がひっ迫する都度、小児科病床は閉鎖され、コロナ病床に転床された。そのため、小児科病床の平均入院患者数は例年の半数にとどまり、研究に組み入れられる患者数は予定を大幅に下回った。このような理由により、研究が遅れている。 その間、代替案として限られた患者でより多くの検査を行うこととし、2022年度の心肺負荷試験の詳細な評価により、予備的な実証を行った。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症が5類に移行した後も、関西医科大学総合医療センターは大阪府の新型コロナウイルス感染症の重症病床を2024年9月末まで継続し、小児科入院患者の当初の研究計画より減少することは必定である。そこで2024年10月以降の研究実施を促進するとともに、可能な範囲で関連病院への研究協力を呼び掛ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、重症起立性調節障害児に対する最も有効な運動療法のあり方を4週間の入院治療の前後の各種指標の比較により実証することを目的としている。 しかしながら、研究の遅れが生じた理由にも記載した通り、研究の実施施設である関西医科大学総合医療センター(研究代表者の本務先)は大阪府の新型コロナウイルス感染症の重症患者治療の中核病院となっており、流行し大阪府の医療がひっ迫する都度、小児科病床は閉鎖され、コロナ病床に転床された。そのため、研究に組み入れられる患者数は予定を大幅に下回り、研究の実施に遅れが生じている。そのため、2022年度に行う予定であったデータ収集・解析・成果発表のすべてに遅れが生じた。結果として解析や成果発表に使用する予定であった費用を使用できず、次年度への繰り越しが生じた。 2023年度の使用計画として、関西医科大学小児科の関連施設に研究協力を呼び掛け、症例の組み入れの増加を目指す。
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