研究課題/領域番号 |
21K08055
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
野口 達哉 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (50566495)
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研究分担者 |
戸高 寛 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (80769662)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Sig1R / Sig1Rリガンド / 筋再生 / 筋分化 / 虚血 |
研究実績の概要 |
本年度は、①末梢動脈疾患モデルマウスの作製および病態評価系の構築、および②骨格筋におけるSig1Rの役割を検討した。 ①末梢動脈疾患モデルマウスの作製および病態評価系の構築 マウス大腿動脈を結紮することで末梢動脈疾患モデルを作製した。モデルの病態評価系として、サーモグラフィーを用いて両後肢の皮膚温度を測定した。その結果、健肢と虚血肢で有意に温度差が観察された。さらに、健肢と虚血肢のタンパク質を抽出し、ウェスタンブロット解析により低酸素誘導因子の発現を測定した。その結果、健肢に比べ虚血肢において低酸素誘導因子の発現が増加することが明らかになった。これらの結果は、正しく末梢動脈疾患モデルが作製されていること、および病態評価系が構築されたことを示している。 ②骨格筋におけるSig1Rの役割 骨格筋おけるSig1Rの発現を調べるために、骨格筋において筋再生を誘導したin vivoおよびin vitroモデルのタンパク質抽出液を用いてウェスタンブロット解析を行った。その結果、両モデルの筋再生初期にSig1Rの発現が増加することが見出された。さらに、骨格筋のSig1Rの役割を調べるために、骨格筋細胞においてSig1RのノックダウンおよびSig1Rリガンドの投与を行った。その結果、Sig1Rノックダウンは、筋分化調節因子の発現を低下させることが明らかになった。一方で、Sig1Rリガンド投与は、筋分化調節因子の発現を増加させることが明らかとなった。以上の結果より、Sig1Rは骨格筋において筋再生を調節することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
末梢動脈疾患モデルの作製および病態評価系の構築に成功し、次年度に計画している末梢動脈疾患モデルマウスへのSig1Rリガンド投与による病態改善効果の検証が可能となった。また、骨格筋におけるSig1Rの発現解析および機能解析を行った結果、Sig1Rは筋再生初期に発現が増加すること、Sig1Rのノックダウンは筋分化調節因子の発現が低下すること、Sig1Rリガンド投与は筋分化調節因子の発現増加を促すことが明らかになった。この結果より、骨格筋においてSig1Rは筋再生機構を調節することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
Sig1Rリガンドによる末梢動脈疾患の病態改善効果を検証するために、Sig1Rリガンドを末梢動脈疾患モデルマウスに投与し、サーモグラフィー解析による血行動態評価および免疫化学染色による組織学的評価、ウェスタンブロット解析による生化学的評価の実施を計画している。またSig1Rによる筋再生調節の分子機序の全貌を明らかにするために、質量分析を用いた網羅的解析の実施を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に質量分析を用いた網羅的解析を行う予定であったが、骨格筋におけるSig1Rの動態解析によりSig1Rの発現は筋再生機構で大きく変動することが明らかになり、Sig1Rの発現・機能解析を追加する必要があると判断し、本年度に実施した。その結果、Sig1Rの詳細な発現時期および役割についての多く知見を得る事が出来た。次年度は、これらの知見に基づいて当初予定していた質量分析を実施する。
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