研究課題/領域番号 |
21K08063
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
赤尾 浩慶 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (50398997)
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研究分担者 |
中村 有香 金沢医科大学, 総合医学研究所, 助手 (00565632)
飯田 安保 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (10337173)
梶波 康二 金沢医科大学, 医学部, 教授 (40262563)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 冠動脈硬化症 / rotablator / メタボローム / メタボライト / 疾患マーカー |
研究実績の概要 |
冠動脈硬化症は死因の上位を占め、生活様式の変化により近年増加している。また高度な石灰化を伴う冠動脈病変は治療困難な場面が多い。本研究の目的は、冠動脈硬化症に対する新たな治療戦略策定を目指し、動脈石灰化の発生と進展の機序解明を目的とする。具体的には、冠動脈rotablator治療後に冠循環から体循環に流出する動脈硬化血管壁由来分子を含む血液検体を用いることにより、in vivoの血清中のメタボライト(代謝物)およびアテローム性動脈硬化に関わるエクソソーム内に含まれるメタボライト(代謝物)をメタボローム解析で同定し、治療前後の動態ならびにその機能を解明することにより治療法開発への発展を目指す。メタボライト(代謝物)を網羅的に解析するメタボローム解析により得られた代謝物はセントラルドグマの最下流に位置するため、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームで得られる、より上流の情報よりも表現型に近く、生体内の状態を知る最適な方法であると考えられる。また、エクソソーム内には、数百種類にも及ぶDNA、メッセンジャーRNA、miRNAやタンパク質が内包されているといわれており、細胞が局所で分泌したエクソソームは一定期間血中に存在することも分かっている。エクソソーム内に含まれる代謝物を測定した例についてはほとんど報告がなかったが、近年報告がされはじめている。このことから、石灰化冠動脈の切削後の動脈硬化血管壁由来分子を含む血液検体を用いることにより、血清中のメタボライト(代謝物)およびアテローム性動脈硬化血管壁に存在する白血球由来細胞(マクロファージ)、平滑筋細胞等のエクソソーム由来メタボライト(代謝物)を同定し、治療前後の動態ならびにその機能を解明することにより治療法開発への発展を目指すものである。令和3年度は症例の血清サンプルをAgilent CE-TOFMSによる網羅的な解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では高度石灰化冠動脈硬化症に対する治療としてrotablator治療を行った症例を対象とし、rotablator施行前、施行直後、3時間後、24時間後に経静脈的にEDTA採血を行い、得られたサンプルをメタボローム解析に使用する。サンプルはキャピラリー電気泳動と飛行時間型質量分析装置(TOFMS)の組み合わせで解析し、メタボライトを半定量的に同定する。本研究の要となるメタボローム解析はAgilent CE-TOFMS system(Agilent Technologies社)を用いて実施した。研究準備状況としては、当施設は年間に約1,000例の冠動脈造影検査、350例以上のPCIを継続的に行っており、新規施行例から研究参加の同意を得ることに支障はない。また先行研究に際し経時的に採取された50症例以上の試料の一部は保管されており、予備解析あるいは本研究開始後の解析に合わせることが可能である。このような準備状況下で血清サンプルについてAgilent CE-TOFMSによる網羅的な解析を行った。その結果、50種類を超えるメタボライトが検出された。Rotablator施行により影響を受けたメタボライトも多く、PCA解析の結果、施行前と施行直後は似たパターンを示していたが、施行後3時間、24時間後にはそれぞれ大きく異なる結果が得られた。興味深いことに、体内での代謝マップの中で芳香族アミノ酸の代謝経路に関わるメタボライトが変動している可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
得られたメタボローム解析の結果からは、芳香族アミノ酸代謝に加えていくつかのパスウエイの関与が示唆されてきた。特に24時間後に大きく変動したメタボライトが多く、治療による影響を時間経過を追って検出できる可能性が高いと考えている。今後は、患者のサブグループ(例えば透析治療の有無)に基づいてデータの再解析を行うことによって、今年度得られたメタボローム解析の結果について再現性を求めていく予定である。さらに、多様な因子が分泌されてくることが予想されているため、化合物とタンパク質、脂質、エキソソームなどの雑多な夾雑物の変動を見ることになる。メタボライトは低分子化合物であるため、他の生体成分と比較して変成作用や熱処理に耐性を持つことが期待される。このため、上清を加熱とフェノール処理によりタンパク質成分とエキソソームを変性させて除去したメタボライト分画のみをレスポンダー細胞の培養液に添付し、その細胞のトランスウエルでの遊走能、トランスクリプト―ム解析をDNAマイクロアレイで実施する。これにより、治療により特異的に変化したメタボライトの作用を明らかにする。また、候補分子の中で治療につながるような効果を持つと期待される分子について化学合成品を購入して混合添付し、抑制効果を上記の方法と同様に解析する。得られた結果については、治療マーカーとしての有用性の有無を検討していくとともに、血中の濃度変化が誘導された機序についても検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回は本年度の予算内で可能な検体数を測定した。症例検体の測定は同時に複数検体の測定、解析を行うことにより1検体の測定費用を抑えることが出来る為、次年度使用額と合わせる事により、多くの検体数の測定が可能となる為、今後複数症例の測定ならびにサブグループに基づくデータの解析を計画している。
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