研究課題/領域番号 |
21K08292
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
人見 浩史 関西医科大学, 医学部, 教授 (70346641)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 再生医学 / 移植・再生医療 / iPS細胞 / 内分泌細胞 / エリスロポエチン / 甲状腺ホルモン / 副甲状腺ホルモン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒトiPS細胞から高効率に内分泌細胞を誘導し、生体に移植することにより生理的な補充を行うことである。2021年度は、内分泌ホルモン産生細胞として、エリスロポエチン産生細胞、甲状腺細胞、副甲状腺細胞を、ヒトiPS細胞から高効率に分化誘導する方法を検討した。これまで報告した分化誘導法に、いくつかの誘導因子を加えることや、これらの刺激時間を至適化することで、誘導効率を上げることができ、新規分化誘導法とした。また、産生された内分泌ホルモンのマーカーを発現するiPS細胞を作製した。この内分泌検出細胞と、我々が独自に開発した分化誘導法を組み合わせ、低コストで簡便に内分泌ホルモン産生を検出することができた。これにより、ヒトiPS細胞から高効率に内分泌細胞を分化誘導する検討を容易に行うことが可能となった。 さらに、作製された細胞の品質特性の検討を行った。ヒトiPS細胞由来エリスロポエチン産生細胞は肝臓系譜の細胞であり、胎生期の肝芽細胞に近いと考えている。そのためエリスロポエチン以外の様々な因子を分泌していることを確認した。これらの分泌因子に関して、臨床応用の際に問題とならないことを検討した。一方、ヒトiPS細胞由来エリスロポエチンや他の内分泌ホルモンは多彩な糖鎖を認めた。そこで詳細な糖鎖解析を行い、生理活性や半減期に影響を与える糖鎖を検討した。 内分泌補充療法を必要とする患者は非常に多く、ヒトiPS細胞由来内分泌細胞は全く新規の細胞療法や薬剤開発を提供することができる。2021年度に開発した内分泌ホルモン産生細胞高効率誘導法と新規内分泌ホルモン検出細胞は、今後の研究に有用であるだけではなく、内分泌ホルモン補充療法や新規薬剤の開発に非常に有望であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に予定していた研究内容については、ほぼ全て終了しており、概ね予想された結果を得ることができた。得られた知見を参考にし、また測定系や改良した分化誘導法を利用し、2022年度に計画している研究内容に関しても、一部予備実験を開始し、既に準備を行っている。今般の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、実験に支障を来すことも予想されるが、実施可能な研究を先行するなどの対策を立てている。研究計画の立案に際し、問題となると予想された点についても対応し順調に遂行できている。そのため交付申請書に記載された研究目的に対する達成度としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究計画に関しては、おおむね順調に推移している。2022年度は、各種疾患モデル動物の作製と細胞移植用デバイスの開発を計画している。各種疾患モデル動物に関しては、2021年度までに予備実験を行い、既に作製可能であることを確認している。細胞移植用デバイスについては、2021年度までに構築したシステムを流用する。それ以外で研究を遂行する上で課題が生じた場合には、研究計画書に挙げた対策に沿って研究を行う予定である。
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