本研究の目的は、ヒトiPS細胞を内分泌細胞に分化誘導し、内分泌ホルモン産生・分泌機構と病態の解明することで腎不全合併症に対する新規治療法を開発することである。さらに、ヒトiPS細胞由来内分泌細胞を生体に移植することによって、内分泌ホルモン補充を行う細胞療法の開発を目的とする。 2023年度は、これまでの成果であるヒトiPS細胞から内分泌細胞に分化誘導する方法と独自に開発したホルモン検出細胞を用いて検討を行った。まず、副甲状腺細胞をヒトiPS細胞から誘導する方法を開発し、学術論文として報告した。(Stem Cells Dev. 2023)さらに、副甲状腺細胞の分化誘導法を特許出願し取得した。(特開2021-069345)内分泌ホルモン検出細胞を用いた検討では、in vitroにおいて様々な刺激により内分泌ホルモンの産生が変化することを明らかにした。次にin vivoの検討を行い、細胞が移植可能であり、モデル動物の体外から内分泌ホルモン産生を確認した。研究期間全体では、計画された実験を概ね行うことが可能であった。さらに今後の研究に有用な結果を得ることも出来た。 内分泌補充療法を必要とする患者は非常に多く、ヒトiPS細胞由来内分泌細胞は全く新規の細胞療法や薬剤開発を提供することができる。これまで開発したエリスロポエチンや副甲状腺ホルモンなどの内分泌ホルモン産生細胞誘導法や、内分泌ホルモン検出細胞および動物モデルは、今後の研究に有用であるだけではなく、内分泌ホルモン補充療法や新規薬剤の開発に非常に有望であると考える。
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