研究課題
前年度までの研究では、マウス汗腺ではヒスタミン産生に必要なHDC遺伝子が発現していること、in-vitroで培養した汗腺細胞内にヒスタミン産生が検出されることを明らかにした。本年度は、まずマウス汗腺におけるヒスタミンの代謝酵素や輸送蛋白の発現を調べた。マウス汗腺から抽出したmRNAを用いて、細胞内で産生されたヒスタミンの代謝や輸送に関わる遺伝子が発現することを検出した。また、マウス足底の皮膚組織を用いた免疫染色によりマウス汗腺におけるHDC蛋白発現の局在を検討したところ、汗腺分泌部ないし汗管部にHDC蛋白が発現していることを確認できた。その産生が汗腺分泌部細胞にあるのか、あるいは汗管上皮細胞にあるのかを区別する必要があり、各部位に特異的な蛋白発現を指標として、HDC蛋白との蛍光二重染色を行うための条件を検討中である。さらに、汗腺におけるヒスタミン産生を増強する因子を探索するために、in-vitroの汗腺培養系に種々の神経ペプチドやサイトカインを添加し、誘導されるHDC遺伝子の発現量を測定した。無刺激の汗腺と比較して優位に産生増強を誘導する分子を選別しつつある。一方、汗中にはヒスタミンに外にも多数の抗菌ペプチドや炎症性メディエータが含まれている。本研究で確立した培養系を利用することで、ヒスタミン以外に汗中に検出される他の炎症性メディエータの産生の有無や産生増強因子についても検討中である。その中で、マウス表皮と汗腺では抗菌ペプチドの産生の仕方に違いがあることが分かった。
3: やや遅れている
汗腺を採取、培養するための手順が煩雑で、一つ一つの測定に時間を要しているため。また、汗腺におけるHDC発現やヒスタミン産生の程度は強くなく、高感度にそれらを検出するための実験系の確立に時間を要しているため。
汗腺内でのHDC発現の局在を明らかにするために、汗腺分泌部細胞と汗管上皮細胞に特異的な蛋白発現を指標として、HDC蛋白との蛍光二重染色を行う。また、HDC発現を増強する因子の同定を進める。同定された因子によるin-vitroでのHDC蛋白発現やヒスタミン産生の増強効果や、in-vivoで汗腺がその因子に曝露することによるHDC発現増強を検討する。また、同定された因子が汗腺細胞に作用する受容体や機序を解析する。さらに、研究で確立した培養系を利用することで、ヒスタミン以外に汗中に検出される他の炎症性メディエータの産生の有無や産生増強因子についての検討も同様に進めていく予定である。
培養細胞を刺激する際のサイトカインや蛋白発現の検出に用いる抗体の使用量が当初の予定よりも少なかったため、残額を生じた。次年度に、実験に必要なサイトカインや抗体を購入する際の費用にあてる計画である。
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