研究課題/領域番号 |
21K08337
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
今井 康友 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10529514)
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研究分担者 |
金澤 伸雄 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90343227)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Circulating ILC2 / Skin-Resident ILC2 |
研究実績の概要 |
インターロイキン33(IL-33)は2型サイトカイン産生を促す炎症性サイトカインである。表皮でIL-33を過剰に産生する遺伝子改変マウス(IL33Tg)は2型自然リンパ球(ILC2)依存性にアトピー性皮膚炎(AD)を自然発症する。しかし、ILC2はヘテロな細胞集団であり、どのILC2が病態に重要か、どのようにADの発症に関与するか、明らかではない。本研究では、①稀少細胞である皮膚ILC2の遺伝子発現変化をシングルセルRNA-seq解析で検出可能とする実験系を構築することに成功した。それより、②多様である皮膚ILC2の細分類を試みた。 シングルセルRNA-seq解析を用いて、ILC2の発現する遺伝子パターンを網羅的に解析したところ、IL33Tgマウスの皮膚炎においてILC2は2つの異なる発現パターンが確認され、一方は、Th2サイトカインを多く産生する遺伝子パターンを示し、もう一方は、これらの遺伝子発現は弱く、MHCクラスⅡ関連遺伝子パターンの発現が強く見られた。そこで、光変換マーキングされたILC2を用いて、皮膚ILC2が所属リンパ節で観察され、皮膚から遊走していることを確認した。フローサイトメトリーで確認すると、皮膚からリンパ節に遊走するタイプのILC2に関してはMHCクラスⅡ関連タンパクを発現していた。一方、皮膚に留まり続けたILC2はELISAにおいて2型サイトカインであるIL-4,5,13を多く産生することが示された。これらの表面マーカーの相違と遺伝子発現パターンから、我々は、皮膚から所属リンパ節に遊走するILC2をCirculating ILC2、皮膚に留まるILC2をSkin-Resident ILC2と命名した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シングルセルRNA-seq解析は最新の技術であり、実験系の確立そのものが難しいと予想していたが、これまでの経験から、計画以上に、すみやかに実験系を確立することができた。そのため、研究実績の概要に記載した研究前半の内容は、インターネット速報雑誌に既に掲載されるに至った(下記文献1)。以上より順調に進展していると言える。
文献1:Nakatani-Kusakabe M, Imai Y* et al, JID Innovations,1:100035, 2021 (* corresponding author)
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今後の研究の推進方策 |
動物実験においてはILC2のサブグループについて他の炎症性疾患との関係性について追加で検討していく。また、2型サイトカインを産生している活性化ILC2に特異的な分子を検討していく。さらに、それら標的分子候補の発現抑制・欠損による2型サイトカイン産生の抑制、IL33Tgの表現型への影響を明らかにする。本研究によって、ADにおけるILC2の役割やILC2特異的なマーカーが明らかになることで、ADなどアレルギー性疾患の新規治療法の開発や創薬に繋げることを目標とする。 なお、研究は遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)に従い、兵庫医科大学遺伝子組換え実験安全管理規程に基づいた手続きを行い、兵庫医科大学遺伝子組換え安全委員会の承認を得た上で本研究を実施する。実験動物は、兵庫医科大学動物実験委員会による承認を得たうえで、動物福祉ならびに動物の愛護及び管理に関する条例(兵庫県)を遵守した上で実施する。
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