研究実績の概要 |
インターロイキン33(IL-33)は2型サイトカイン産生を促す炎症性サイトカインである。上皮系組織でIL-33を過剰に産生する遺伝子改変マウス(IL33Tg)は2型自然 リンパ球(ILC2)依存性にアトピー性皮膚炎(AD)ならびにアトピー性角結膜炎(AKC)を自然発症する。しかし、ILC2はヘテロな細胞集団であり、どのILC2が病態に重要か、どのようにADやAKCの発症に関与するか、明らかではない。 シングルセルRNA-seq解析を用いて、ILC2の発現する遺伝子パターンを網羅的に解析したところ、IL33Tgマウスの皮膚炎やAKCにおいてILC2は2つの異なる発現パター ンが確認され、一方は、Th2サイトカインを多く産生する遺伝子パターンを示し、もう一方は、これらの遺伝子発現は弱く、MHCクラスII関連遺伝子パターンの発現が強く見られた。そこで、光変換マーキングされたILC2を用いて、皮膚ILC2が所属リンパ節で観察され、皮膚から遊走していることを確認した。皮膚からリンパ節に遊走するタイプのILC2に関してはMHCクラスII関連タンパクを発現していた。一方、上皮系組織に留まり続けたILC2は2型サイトカインであるIL-4,5,13を多く産生していた。これらの表面マーカーの相違と遺伝子発現パターンから、我々は、皮膚から所属リンパ節に遊走するILC2をCirculating ILC2、皮膚に留まるILC2をSkin-Resident ILC2と命名した。さらに、このマウスに生じるAKCにおいては、ILC2を消去するとAKCが消失することも明らかにできた。また、ILC2の産生する2型サイトカインがタクロリムスで抑制することも明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シングルセルRNA-seq解析は最新の技術であり、実験系の確立そのものが難しいと予想していたが、これまでの経験から、計画以上に、すみやかに実験系を確立することができた。そのため、研究実績の概要に記載した研究前半の内容は文献1にすでに掲載、後半は文献2で受理されるに至った。以上より順調 に進展していると言える。
文献1: Nakatani-Kusakabe M, Imai Y* et al, JID Innovations,1:100035, 2021 (* corresponding author) 文献2: Hosotani Y, Yasuda K, Nagai M, Yamanishi K, Kanazawa N, Gomi Fumi, Imai Y*. IL-33-induced keratoconjunctivitis is mediated by group 2 innate lymphoid cells in mice. Allergol Int,72(2): 324-331, 2023 (* corresponding author)
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