研究実績の概要 |
インターロイキン33(IL-33)は2型サイトカイン産生を促す炎症性サイトカインである。上皮系組織でIL-33を過剰に産生する遺伝子改変マウス(IL33Tg)は2型自然 リンパ球(ILC2)依存性にアトピー性皮膚炎(AD)ならびにアトピー性角結膜炎(AKC)を自然発症する。また、ヒトのILC2はIL-4依存性に活性化するため、IL-4阻害剤であるデュピルマブでADの治療を行うとILC2が減ることや、末梢血液中にILC2が多い患者においてデュピルマブの有効性が高い(ハイレスポンダー)ことが判明した。しかし、薬剤効果判定にフローサイトメーターでILC2を測定するのは現実的ではなく、血清でILC2関連物質を検索するアプローチも必要である。 そこで、デュピルマブを投与したAD患者の血清を用いて、血清メタボロミクス解析を実施した。ILC2が末梢血中に高かった群では10種類の代謝物に有意な差が見られた。これらは、リボース、乳酸、アラニン、シュウ酸、グリセリン酸、フマル酸、ノナン酸、キシロース、オルニチン、ソルビトールであった。薬剤の効果予測に有用な特定の代謝物としては、リボースとノナン酸があった。血清を検体としたアプローチによって今後ILC2と相関性の良いバイオマーカーが発見される可能性がある。
なお、上記の内容の一部は下記の論文に掲載した。 Miyamoto S, Imai Y, Matsutani M, Nagai M, Yamanishi K, Kanazawa N, Nishiumi S, "Exploration of Metabolite Biomarkers to Predict the Efficacy of Dupilumab Treatment for Atopic Dermatitis", Disease Markers, vol. 2023, Article ID 9013756, 8 pages, 2023. https://doi.org/10.1155/2023/9013756
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題そのものの進捗について、おおむね順調に進展しており、実際に、今までの研究成果について下記論文にて皮膚2型自然リンパ球(ILC2)がアトピー性皮膚炎などの皮膚炎に与える影響について、インパクトファクターの高い雑誌に掲載することができた。
論文業績: Imai Y. ILC2s in skin disorders, Allergol Int, 72(2),201-206,2023. https://doi.org/10.1016/j.alit.2023.01.002
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