研究実績の概要 |
2021年度は、まず野生型LSSの発現ベクターを用いて、site-directed mutagenesis法で計6種類の変異型LSSの発現ベクター(G6D, R177Q, V487E, P549L, W581R, T705K)を作製した。その後、各ベクターを培養細胞内にトランスフェクションし、western blot法と免疫染色法を行った。Western blot法では、特に乏毛症のみを呈する変異型LSSの発現量が野生型に比べて低下していた。抗LSS抗体と抗calnexin抗体を用いた蛍光2重染色では、いずれの変異型蛋白も小胞体外に異所性に局在する傾向が認められたが、特に乏毛症のみを呈する変異型蛋白でその傾向が顕著だった。これらの異常は、LSSのC末端にtagを導入した場合と導入しなかった場合で大きな違いはなかった。次に、LSS遺伝子変異を有する患者の毛髪を光学顕微鏡および電子顕微鏡レベルで詳細に観察した結果、毛包が著しくミニチュア化し、さらに毛小皮が脆弱化している所見が認められた。さらに、原因遺伝子が未知で常染色体顕性(優性)遺伝形式を示す先天性乏毛症の家系について、家系のメンバーのゲノムDNAを用いてエクソーム解析を実施した。データを解析した結果、ステロールが関与する転写因子をコードする遺伝子(つまり脂質関連遺伝子)に、病的変異であることが強く示唆されるミスセンスバリアントが罹患者のみにヘテロ接合型で同定された。その他にも、毛包の構想蛋白をコードする遺伝子などに、罹患者のみがヘテロ接合型で有する遺伝子が複数抽出された。
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