研究実績の概要 |
2022年度は、野生型および6種類の変異型LSSの発現ベクター(G6D, R177Q, V487E, P549L, W581R, T705K)を培養細胞に過剰発現させ、過去の文献に記載されていた方法に従い、各LSS蛋白のラノステロール産生能を検討した。その結果、野生型に比べ、6種類の変異型LSS蛋白すべてでラノステロール産生能が有意に低下していた。また、変異型蛋白間で産生能に若干の違いは認められたが、統計学的な有意差はなかった。本結果は、単にラノステロール産生能の低下だけでは各変異による表現型の違いを説明することができないことを示唆しており、変異による他の機能異常にも着目する必要性があると考えらえた。さらに、本解析で用いたのはHEK293T(腎臓由来の細胞)であったことから、HaCaT細胞などの表皮角化細胞由来の細胞株を用いれば、より表現型を反映した結果が得られる可能性もある。 次に、2021年度にエクソーム解析で同定した脂質が関与する転写因子をコードする遺伝子のバリアントについて培養細胞レベルで検討を行い、同バリアントによる機能喪失を示す結果が得られた。すなわち、同遺伝子がコードする蛋白が核内に移行できず、転写因子として機能しない異常を呈することがわかった。さらに、バリアントが同定された患者の頭髪を光学顕微鏡および電子顕微鏡で詳細に観察した結果、毛髪は脆弱であり、毛髪中のケラチン線維の量が著しく少ないことがわかった。これは、同遺伝子が毛ケラチン蛋白や毛ケラチン関連蛋白の発現を調節している可能性を強く示唆している。
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