HLA不適合造血幹細胞移植後のドナーT細胞は、3つのHLAハプロタイプ、すなわち、患者とドナーが共有するもの(共有HLA)、ドナーだけが持つもの(ドナー特異的HLA)、患者だけが持つもの(宿主特異的HLA)のいずれかに拘束性となる。本研究では宿主特異的HLAを含め、それぞれのHLA拘束性T細胞の存在を調べた。HLA-A24またはHLA-A2を有する患者またはドナーの40症例64サンプルを対象に、HLA-A*24:02およびA*02:01拘束性CMVテトラマーを用いて、個々のHLA拘束性T細胞を検出した。移植後90日目では半数以上、900日目以降では全例で共有HLA拘束性T細胞の存在が認められた。宿主特異的HLA制限T細胞はどの患者にも検出されず、ドナー特異的HLA制限T細胞は90日目以降の患者の半数に検出された。移植タイプの比較では、共有HLA拘束性T細胞はHLA半合致移植で50%、両ハプロ不適合移植で75%、夫婦間移植で67%が陽性であった。ドナー特異的HLA拘束性T細胞は、ハプロ移植で57%、両ハプロ不適合移植で67%が陽性であった(夫婦間移植ではテトラマー検査に適当なHLA組み合わせがなかった)。これに対し、宿主固有HLA拘束性T細胞はいずれのサンプルでも検出されなかった。共有HLA拘束性T細胞の存在は、HLA半合致移植後の宿主防御を説明し、ドナー特異的HLA拘束性T細胞の存在は、血球向性ウイルスに対する宿主防御を説明するかもしれない。しかし、この研究では宿主特異的HLA拘束性T細胞が検出されなかったため、上皮向性ウイルスに対する宿主防御については説明し得ない。にもかかわらず、HLAがすべて異なるドナーから移植した一例では、上皮向性ウイルスであるCOVID19が治癒した経験があり、これを症例提示した。現在、論文を投稿し、リバイス中である。
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