研究課題/領域番号 |
21K08910
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中川 知己 東海大学, 医学部, 教授 (30439707)
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研究分担者 |
山田 俊介 東海大学, 医学部, 特任教授 (00210451)
長谷部 光泉 東海大学, 医学部, 教授 (20306799)
山本 章太 東海大学, 医学部, 臨床助手 (20799548) [辞退]
堀田 篤 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30407142)
岩崎 正之 東海大学, 医学部, 教授 (90223388)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 難治性気胸 / 癒着剤 / インジェクタブルゲル / 術後肺漏 |
研究実績の概要 |
現在われわれは、難治性気胸(耐術能低下などを含む手術適応困難例)や肺切除術後の合併症である術後肺婁に対する治療に対し、生物学的製剤によらない新たな合成癒着剤の臨床応用を目標としている。癒着剤の効果、侵襲、副作用を評価するためラットを開胸し人為的な気胸モデルをつくり、実験を進めてゆく方針とした。その段階として、第一段階として開胸操作によりどの程度の侵襲、胸膜癒着があるかを評価する実験を施行。第二段階としてラットの気胸モデルを作成(人為的に気胸の状態を作成)し、気胸によりどの程度の癒着が生じるかを評価。第三段階として、ラット気胸モデルを作成しさらに癒着剤を使用しどの程度の 侵襲、胸膜癒着があるかを評価する実験を施行。癒着の程度の評価は、開胸操作、気胸モデル作成、癒着剤使用後、ケージ内で数週間経過観察後、安楽死処分。 その後ホルマリン固定、H.E.染色し、鏡検する。線維芽細胞の出現、フィブリンの析出、臓側あるいは壁側胸膜の肥厚、炎症細胞免疫担当細胞の出現の程度により癒着の程度を病理組織所見で評価。また副作用に関しては、上記処置後、ラットの動きや、食餌摂取しているかを体重の増減を測定し評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先ず1匹のラットで手技の訓練を施行。実施可能だった手技としては,搬入,鎮静・鎮痛,気管挿管,人工呼吸管理,左側胸部開胸であった。次いで3cm開胸モデル3匹、2cm開胸モデル3匹、1cm開胸モデル3匹を作成。閉胸後1か月観察後、殺処分し、肺と胸壁部位の組織を採取固定し鏡検し癒着の程度を評価。臓側壁側胸膜軽度肥厚、炎症細胞軽度浸潤所見あり。開胸では軽度癒着所見を認め開胸創の長さは影響なかった。再現性確認のため、次年度に繰越す予定。また、上記操作を通じてラットの開胸術における気管挿管と人工呼吸管理の最適化に関しても評価した。詳細に関しては【方法】実験は雌性Wistarラット16週齢3匹を用いた。挿管チューブの外径および長さを決定するために、安楽死後の個体から気管長(切歯から気管分岐部まで)と気管内径を測定した。麻酔導入し気管挿管後、左開胸でアプローチし胸腔内を観察。最適なPositive end-expiratory pressure(PEEP)を決定するために、0-5 cmH2Oまで1 cmH2O刻みに設定し、30秒の換気後に肺の拡張程度を1-5 のスコア(1完全虚脱;5良好な拡張)で肉眼的に評価した。【結果】ラットの切歯から気管分岐部までの長さは平均59.7 mm(59.5mm,59.5mm,60.1 mm)で、内径は平均1.63 mm(1.7 mm,1.6mm,1.6mm)だった。そのため16 G(外径 1.7 mm)で長さ48 mm の静脈留置針の外筒が同上のラット気管挿管に適していると判断した。Tidal volume0.01 ml/g 、呼吸数60 bpm、PEEPは4および5cmH2Oにおいて良好な肺の拡張が得られた(いずれも肺拡張の平均スコア5.0)。過膨張のリスクを考慮し、開胸時ラットにおける最適なPEEP は4 cmH2Oと判断。
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今後の研究の推進方策 |
二段階としてラットの気胸モデルを作成(人為的に気胸の状態を作成)し、気胸によりどの程度の癒着が生じるかを評価。第三段階として、ラット気胸モデル を作成しさらに癒着剤を使用しどの程度の侵襲、胸膜癒着があるかを評価する実験を施行。上記①研究実績の概要に則り施行予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
Wister STラット 16週齢 10匹を使用した。他、吸入麻酔としてセボフルラン、固定染色標本作成に予算を利用した。実験動物のラット、麻酔薬が予想よりも安価であったことがあげられる。また通常ヒトでは、開胸または胸腔鏡手術後胸壁と肺との間(臓側胸膜と壁側胸膜との間)の癒着が生じるのに4週間以上の時間を要するため、ラット開胸操作術後4~6週間の観察期間をおいてから、安楽死処分→採材→固定→染色→鏡検の手順で実験を施行していた。ヒトを基準に観察期間を設定していたため、多くの匹数での実験は難しかったためと考える。しかし、ヒトでの所見がそのままラットに当てはまらない可能性があり今後は観察期間を短縮してより多い匹数ラットで実験ができれば繰越額を少なくすることが可能と考える。
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