研究課題/領域番号 |
21K08958
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
上林 卓彦 関西医科大学, 医学部, 教授 (10273640)
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研究分担者 |
岩崎 光生 関西医科大学, 医学部, 講師 (80528365)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 移植 / 心不全 |
研究実績の概要 |
9週齢のSDラットをセボフルランの吸入で緩徐導入した後に気管切開・人工呼吸した。頸動脈と頸静脈に24Gのカニューラを挿入して動静脈ラインを確保した。次に頭蓋内に4FrのFogarty catheterを挿入した。開胸して心尖部より左心室に圧カテーテルと容量カテーテルを挿入し、左心室のPV loopを描出した。その後、頭蓋内に留置したバルーンを膨らませることで脳死を導入した。 バルーンを膨らませる速度(脳死導入速度)が速いと重度の心不全、肺水腫を来して高率に脳死直後の心停止を起こした。また脳死導入速度が遅すぎると心機能の障害が不十分となった。そのため理想的な脳死導入速度を検討し、10分間でバルーンを0.7ml膨らませることで、脳死直後の心停止を減らしつつ安定した心機能障害を発生させることができるようになった。この脳死導入の方法で、脳死から240分から360分の間に心機能が低下して心停止に至る結果が得られた。具体的には血圧、左室駆出率、dp/dt maxが徐々に低下していく結果となっている。 現在、脳死群(コントロール群)のデータを集めており、コントロール群のデータ採取が終了したら、心不全治療薬であるlevosimendan, omecamtiv mecarbi, cimaglermin alfa, urocortin-2, empaglifozinを投与して、脳死後の心機能への作用を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
急速に脳死を導入すると、心不全、肺水腫を起こして心停止するため心機能が低下するデータを測定することができなかった。また、緩徐に脳死を導入した場合には一時的に血圧の上昇をきたすが、そのまま血行動態が安定したまま経過した。脳死の際の侵襲が不十分であると考えられた。 頭蓋内のバルーンを収縮期血圧が100mmHg以下になったところで0.1mlずつ膨らませることで、およそ10分間でバルーンを0.7ml膨らませる状態となり、適度な脳死の侵襲を受けた心臓の機能を評価できるようになった。この結果、コントロール群のデータは蓄積されつつあり、次年度には投薬による脳死ラットの心機能への影響を調べることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
心不全治療薬であるlevosimendan, omecamtiv mecarbi, cimaglermin alfa, urocortin-2, empaglifozinを投与して、脳死導入後の血圧、脈拍、左室駆出率、dp/dt maxの経時的な変化を測定する。 また、各心不全治療薬を投与した脳死ラットにアドレナリン10μg/kgを静脈投与することで不整脈を誘発し、アドレナリン投与後3分間で発生した不整脈の種類・頻度・持続時間を比較する。 心機能保護、抗不整脈作用をしめした薬剤について、投与した群の左心室の心筋組織を採取する。ウエスタンブロッティングを行い、PI3kinase-Akt経路に関わるタンパク質の発現・リン酸化を定量し、コントロール群と比較することにより各種薬剤の強心作用・心筋保護作用に関与するメカニズムを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
以前購入した心機能測定用の圧カテーテル・容量カテーテルを今年度の研究に使用した。これらが期間中に破損しなかったため、使用額が減額となった。 なお、カテーテルは消耗品であり、今後破損・新規購入が発生する見込みである。
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