研究課題/領域番号 |
21K09087
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
布施 明 日本医科大学, 医学部, 教授 (80238641)
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研究分担者 |
小山 博史 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (30194640)
布施 理美 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (30229083)
落合 秀信 宮崎大学, 医学部, 教授 (40224258)
石井 浩統 日本医科大学, 医学部, 助教 (50614830) [辞退]
宮内 雅人 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (60312063)
大西 光雄 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 科長・グループリーダークラス (70597830)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 離散事象シミュレーション / 待ち行列モデル / 大規模地震 / 津波 / 未治療死 / 防災・減災 / 保健医療活動チーム / 広域医療搬送 |
研究実績の概要 |
南海トラフ地震の被害想定では負傷者数は50万人超が想定されているが発災急性期の医療対応を俯瞰して予測した検討は未だなされていなかった。今回、研究代表者らが開発した災害医療対応シミュレーション・システムを用いて、南海トラフ地震の急性期の災害医療対応を予測した。本研究の目的は「南海トラフ地震の災害医療対応シミュレーション・システムを構築して、広範囲にわたる被災地域の医療支援の現実最適解を得るために必要な因子を導く」ことである。 そこで、最初に負傷者数の多い主要8府県(静岡県、愛知県、三重県、大阪府、和歌山県、徳島県、愛媛県、高知県)における未治療死数を算出した。「未治療死」は“自然災害等の発生後、災害による直接死を免れたもののその後、適切な医療を受けることができないことによる死亡”と定義した。現状では大阪府を除く7県で未治療死者数は重症者数の6割以上となった。重症者数における未治療死者数の割合を未治療死率とすると、高知県(85.0%)、三重県(81.5%)では未治療死率は8割以上となり、和歌山県(79.5%)、静岡県(78.7%)、徳島県(75.4%)、愛媛県(66.7%)、愛知県(64.1%)の順となった。 次に、防災・減災対策を現状よりさらに進めた場合の未治療死に与える影響を試算した結果、全ての府県で未治療死者数が減少していることが判明した。高知県の未治療死減少率(現状の未治療死者数に対する減災後の未治療死者数の減少の割合)は91.1%であり、愛媛県92.3%、和歌山県99.2%、徳島県99.3%となり、未治療死者数は9割以上減少した。 未治療死対策を講じる上で参考となる指標が重症者ベッド占有率(2次医療圏ごとの1病床あたりの重症者数)である。重症者ベッド占有率が0.5を超えると未治療死数が増加することが明らかとなり、未治療死を抑える施策を考える際に有効な指標と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南海トラフ地震で傷病者数の多い府県における現在の急性期医療対応での状況と、今後予定される防災・減災対策が施行された場合の医療対応の予測を数値として示すことができ、進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、公表が予定されている南海トラフ地震の新しい人的被害状況をベースとして、災害医療シミュレーションを行い、未治療死の発生状況を予測し、新旧で比較検討を行う。未治療死数が改善されていることが予想されるが、シミュレーションから改善したポイントを探る。依然、被害が甚大な府県がある場合には、当該県を2次医療圏単位で検討し、その要因を探る。また、いわゆる“半割れ”の予測が提示された場合には、半割れのシナリオを複数想定し、どのように災害医療シミュレーションを行うことが可能かを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、南海トラフ地震の新しい被害想定が公表されるとの予想がなされているため、新しい人的被害想定を用いて、最新の発災後急性期の被害想定を行うことでアップデートできるため、「次年度使用額」が生じた。 これまで行ってきた発災後急性期の災害医療シミュレーションと比較検討を行うことにより、新しい人的被害による発災後急性の災害医療の詳細を検討し、未治療死数を試算する。
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