研究課題
悪性神経膠腫である膠芽腫はあらゆる年齢に発生し、原発性脳腫瘍で最も多い腫瘍である。外科的摘出・放射線治療・化学療法などの集学的治療を行っても、腫瘍は再発し腫瘍死を免れない。平均生存期間は約1年で、ここ数十年目立った予後の改善がない難治性腫瘍のひとつである。この治療抵抗性の原因として、がん幹細胞の存在が提唱されている。がん幹細胞が少数でも残存してしまうことで、がん根治が困難となっているという概念である。私たちは、悪性神経膠腫の患者の手術検体から単離したがん幹細胞が、制御性T細胞調節因子(ICOSLG)を高発現していることを見だした。そして、ICOSLGが生命予後に影響を及ぼすことを世界に先駆けて証明し、悪性神経膠腫の治療における免疫療法の可能性を提唱した。その成果を踏まえて、悪性神経膠腫由来のがん幹細胞におけるがん特異的抗原(ネオアンチゲン)を探索するために、RNAシーケンスで網羅的に遺伝子発現を解析した。その結果、悪性腫瘍疾患において開発がすすめられている複数のネオアンチゲン(WT1,IL13Rα2,MAGEA3,MUC1)を同定した。従来のネオアンチゲンによる、脳腫瘍に対する免疫療法は患者の生存期間を延長しているが、根治には至っていない。標的タンパク質の遺伝子が変異している場合は、がん幹細胞はネオアンチゲンを発現していない可能性がある。同定したネオアンチゲンについて、遺伝子変異、スプライシングバリアント、融合遺伝子の解析が必要と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
悪性神経膠腫由来のがん幹細胞が発現する複数のネオアンチゲンを明らかにした。
ネオアンチゲンについて、遺伝子変異、スプライシングバリアントおよび、融合遺伝子を解析する。
予定よりも少ない試薬を用いて効率よく実験を遂行できたため、次年度使用額が生じた。消耗品費(分子生物学用試薬)に充当する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (21件) (うち招待講演 2件)
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