研究課題
グリオーマに対する治療成績は高線量放射線治療の進歩により向上し、長期生存例が増加している。一方で遅発性脳放射線壊死を生じる症例も増加傾向にある。 本病態は進行性の組織壊死と病変周囲に広範な脳浮腫を来たし、患者は種々の神経脱落症状を呈することで QOL が低下す。その結果患者生命が脅かされることになる。これに対し現在は抗 VEGF 抗体ベバシズマブによる治療が行われるようになったが、本治療終了後に壊死再発をきたす症例も多く、本病態のすべてが解明され制御されているとは言い切れない。近年の研究で我々は脳放射線壊死組織内では慢性炎症状態が生じていることを示してきた。そこで本研究課題では、脳放射線壊死組織内における免疫応答の解析を試みることとした。我々の先行研究により、ヒト脳放射線壊死組織内で集積亢進している M2 マクロファージでは B7-H3 (CD276) および B7-H5 といっ た免疫抑制性分子の発現亢進が示された。そこで昨年度からはこれらを深層学習アルゴリズムを用いた病理組織解析システム (Cu-Cyto) を用いた詳細な病理組織解析を試みた。この解析では CD276 発現細胞のみならず、同組織中にみられる三次リンパ構造の発現頻度も評価した。これらの解析の結果、CD276 と三次リンパ構造の発現頻度は正の相関があることが示された。同時に行った予備的検証では、予後との相関も示唆され、今後の追加検証が期待される結果であった。
2: おおむね順調に進展している
AI 解析システムの教育 (教師あり/教師なし) が順調に進んでおり、より詳細な解析が可能になりつつある。進捗状況としては極めて順調である。
令和 5 年度以降は、上記で示された B7-H3 (CD276) および三次リンパ構造の発現頻度と予後および再発との関連解析を詳細に行う。また B7-H5 発現抑制実験については追従して行う予定である。
令和 4 年度は他の研究課題と重複する実験系があり、そちらを遂行することで予備実験にかかる費用の一部が支出可能となったため、次年度使用額が生じることとなった。令和 5 年度は遺伝子解析および AI 病理解析のための多重免疫組織染色が重点的に行われる予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件)
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