研究課題/領域番号 |
21K09187
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
齊藤 邦昭 杏林大学, 医学部, 講師 (50446564)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | グリオーマ / メチル化 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
研究代表者が以前の研究でメチル化アレイ解析を行った130例の神経膠腫の中から膠芽腫43例の臨床データを収集し、予後と関連のあるメチル化部位、遺伝子を抽出した。上位の遺伝子群をgene ontology解析したところ、細胞周期関連でアノテーションされた遺伝子のエンリッチメントがみられた。TCGA(The Cancer Genome Atlas)のデータベースから入手できる膠芽腫のメチル化データを用いて検証を行ったところ、同様の結果が得られた。さらにvalidationするために、当院にて手術を行った膠芽腫についてメチル化解析を行ったところ、メチル化アレイによるサブグループと予後との相関がみられた。さらに症例数を増やして解析し、予後や治療法など詳細な臨床経過と対比させて、よりrobustな予後予測因子や治療効果予測因子の抽出を行った。また、神経膠腫の患者血清および髄液からdigital PCRにより微量な腫瘍由来DNAを抽出し、IDH変異、TERTプロモーター変異、MGMTメチル化について腫瘍検体との比較を行い高い相関を得た。これらliquid biopsyでは、メチル化アレイ解析を行えるほどのDNA量は得られなかったものの、非侵襲的な方法で膠芽腫のメチル化分類を行い、早期に有効な治療を選択するための礎となるデータが得られたと考える。今後、メチル化(エピジェネティック)プロファイルに応じた治療効果の検証後、治療効果を加えたメチル化分類を構築し、膠芽腫検体の再分類を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
メチル化アレイのデータと臨床データから、予後と関連のあるメチル化部位、遺伝子を選出したが、治療効果を検証するためのin vitro/in vivoの実験系が安定せず、研究が遅れている。さらに、実験を担当していた研究協力者の休職が重なり、研究室での実験がなかなか進まなかった。 培養細胞で検証すべきエピジェネティック治療効果の判定もできておらず、治療効果の予測につながるようなメチル化マーカーの選出、確立がまだ不十分であるため、研究期間を1年延長することとした。
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今後の研究の推進方策 |
当院の検体におけるメチル化アレイの解析を計画、実施してすでにデータは届いているため、validationおよび新たなメチル化クラスタリングを行うことができる。 また、研究協力者が復職したため、基礎実験を推進していく。培養細胞を用いた膠芽腫のエピゲノム治療効果の検証を行う。その結果をもとに、既にデータがそろっている網羅的メチル化データから治療効果の予測につながるようなメチル化バイオマーカーの抽出を行う。さらに、validation setを用いてエピゲノムプロファイルの同定および治療効果の検証を行う。 データがそろったところでこれまでの研究成果をまとめて、学会および論文としてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vivo/in vitroの実験が完了していないため必要な試薬等の購入がまだそろっていない。また、結果を報告するための学会参加費用や論文作成のための費用が未使用のため次年度使用額が生じた。 残額に関しては実験を完遂するために必要な試薬の購入を行い、さらに結果をまとめて報告するために、学会成果発表費用および研究成果投稿料等に使用する予定である。
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