研究課題/領域番号 |
21K09264
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
中村 英一郎 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10412644)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロコモティブシンドローム / 転倒 / 疫学研究 / 筋面積 / 腰痛 |
研究実績の概要 |
勤労人口の高齢化に伴い高齢者の労働現場に占める割合は年々高まり、一方、骨粗鬆症や腰部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症等の運動器変性疾患(ロコモティブシンドローム)の有症率は60歳以降急激に上昇する。よってその予防やそれに伴う転倒災害の対策は重要である。本研究では、複数のコホートにて年齢各層におけるロコモや転倒の発生要因ならびに相互作用を調査し、また要因への介入効果を検討するため、以下のことを令和3年度に実施した。 1)筋力強化とバランス訓練の介入:某企業にて筋力とバランス能力の改善に向けた介入研究を行った。バランス運動のみ群、バランス運動+ストレッチ群、バランス運動+体幹筋力トレ群と運動なし群(対照群)として2ヶ月間実施したところ、バランス+筋トレ群においてバランス機能の評価項目が有意に改善した。 2)筋面積や内臓脂肪面積の変化と腰痛の縦断調査:初回時と10年後にCTによる内臓脂肪面積測定と腰痛問診を受けた男性勤労者1459名を対象とし、内臓脂肪面積、大腰筋・脊柱起立筋の面積の10年間の変化と腰痛との関連を解析。初回時問診では、1459名中、576名(39.5%)が“腰痛あり”であった。“腰痛なし”と回答した883名のうち200名(22.7%)が10年後に“腰痛あり”と回答し、10年後の腰痛発症の危険因子として、900kcal/週未満の運動不足が挙げられた。また、座位作業者以外の516名でのサブ解析では、初回時の大腰筋面積が小さく、かつ大腰筋面積が10年間で減少したことが、初回時腰痛の既往と独立して10年後の腰痛の危険因子であった。 3)姿勢と腰痛との関連:我々が開発したインソール型足圧測定装置を用いて、業務中に立位を拘束されている人のみを抽出し腰部コルセットの有用性を検証したところ,コルセット装着時には腰痛の初回出現時間は延長し,全腰痛回数,腰痛頻度が減少したことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調であるが、コロナの影響あり人間ドックでのロコモ評価や転倒に関する調査ならびに病院での下肢変形性関節疾患や腰椎疾患の患者に対するロコモチェックやインソール型足圧測定装置を用いた手術前後の行動評価などの検討はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
筋力強化とバランス訓練の介入研究に関しては、様々なバランス訓練や筋力強化の介入の結果をさらに解析を進めていくと同時に、その介入が転倒予防に効果があったか否か今後検証していく予定である。また、筋面積や内臓脂肪面積の変化と腰痛の縦断調査に関しても、さらなるサブ解析を行い、また、筋面積や内臓脂肪面積の変化と転倒頻度、ロコモ度、骨密度や生活習慣病、腰痛、膝痛などとの関係を縦断的に調査していく予定である。さらに、インソール型足圧測定装置を用いて腰部脊柱管狭窄症や下肢の変形性関節症症例の手術前後の客観的な活動性と痛み、転倒の評価を今後検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:COVID-19による感染拡大の影響で、コホート実施機関における人間ドック運営の縮小等があったため、当該機関におけるロコモチェック、バランス能力テストの運用開始ができず、それに関わる測定機器等の購入が初年度には行われなかったこと。また、国内・国際学会等がほぼ全てオンラインでの実施になり、出張費が支出されなかったこと。 令和4年度以降に改めてコホート実施機関との運用会議を開く予定である。
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