研究課題/領域番号 |
21K09408
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
田中 宣道 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50364071)
|
研究分担者 |
藤本 清秀 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50264867)
中井 靖 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90445065)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 前立腺癌 / 放射線治療 / 5-ALA |
研究実績の概要 |
前立腺癌株であるPC3およびDU145において5-ALA投与群と非投与群に対して2-8Gyの放射線の単回照射を行ったところ、5-ALA投与群において生存率の低下を認めた。これは5-ALAが放射線の増感剤としての作用があることを示した。また、ROS阻害剤により5-ALAの放射線増感作用は減弱しているため、5-ALAの放射線増感作用はROSによる影響であることが考えられた。 またMitoSOXによる染色で5-ALA投与によりミトコンドリアROSが放射線照射直後より有意に増加していることや、JC-1染色でミトコンドリア膜電位が低下していることを示した。フラックスアナライザーを用いた実験では放射線+5-ALA群は放射線単独および5-ALA単独群よりミトコンドリア呼吸能が有意に低下していることを示した。 マウス由来のMyC-CaP細胞株を用いた同種性マウス皮下腫瘍モデルを用いた実験においても、in vitroと同様に放射線+5-ALA投与群においてcontrol、放射線単独、5-ALA単独群と比較して有意に腫瘍の縮小を認めた。摘出した腫瘍を免疫染色したところ放射線+5-ALAではKi67は減少し4HNE及びcleaved-caspase 3は増加を認めた。これは5-ALAの放射線増感作用による細胞増殖能の低下および酸化ストレスが増加し、アポトーシスが亢進している事を示していると考える。 さらに、in vitroにおいて塩化コバルトで処理を行い低酸素環境下では放射線の抗腫瘍効果は減弱していたが、5-ALAの投与により放射線感受性が増加することも示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5-ALAの放射線増感作用を示すことができ、in vivoおよび低酸素環境下でも5-ALAの有用性を示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はin vitroにおいて放射線抵抗性の前立腺癌株を樹立し、5-ALAの投与により放射線抵抗性を減弱させるとができるかどうか実験し、改善された場合はミトコンドリア代謝を中心にその機序を検討していく。さらに、in vivoにおいても同様に検討し、臨床における放射線治療後再発症例に対する治療および、初期治療の放射線に対する再発率の低下を目指すべく臨床応用に結び付けることを 考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今後ミトコンドリア代謝の検討目的にミトコンドリア試薬及び、関連タンパク抗体を購入予定である。
|