研究課題/領域番号 |
21K09435
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
藤ノ木 政勝 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (30316583)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 精子 / 超活性化運動 / 受精能獲得 / セロトニン / トリプトファン |
研究実績の概要 |
マウス(系統ICR)、ラット(系統Wistar-Imamichi)、シリアンハムスターの精子に対してトリプトファンを添加した培地で受精能獲得を起こさせたところ、トリプトファンを添加していない培地で受精能獲得を起こさせた場合より超活性化運動の起こるタイミングが促進される事は分かった。各動物精子へのトリプトファンの作用濃度は、マウスで100ピコモルから10マイクロモル、ラットで1から10マイクロモル、シリアンハムスターで100ナノモルから1マイクロモルであった。 トリプトファンからセロトニンが産生される際の中間産物である5-ヒドロキシトリプトファンを採用させたところ、マウスで1ナノモルから1ミリモル、ラットで100ナノモルから1マイクロモル、シリアンハムスターで1ナノモルから1ミリモルで促進作用が確認された。 トリプトファンによる超活性化運動の促進はセロトニン受容体アンタゴニストによって阻害されることがシリアンハムスター精子で明らかになった。シリアンハムスター精子ではセロトニンはセロトニン受容体2Aとセロトニン受容体4を介して作用するが、トリプトファンはセロトニン受容体4を介して作用していた。 シリアンハムスター精子ではセロトニン受容体4の下流で膜貫通型アデノル酸シクラーゼ、可溶性アデニル酸シクラーゼ、プロテインキナーゼA、CatSperカルシウムチャネルが作動しており、トリプトファンによる作用においてもこれらシグナル伝達タンパク質が作動していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はマウス、ラット、シリアンハムスター精子でトリプトファンで超活性化運動の促進が起こるか、さらに精子においてトリプトファンからセロトニンが産生され、セロトニン受容体を介して作用しているかを確認することを計画していた。検討の結果、各動物精子で作用濃度は異なっていたがトリプトファンで超活性化運動の促進が起こり、かつ精子でトリプトファンからセロトニンが産生され作用すると思われる結果が得られた。現在、トリプトファンからセロトニンが産生される時に働くトリプトファンヒドロキシラーゼの関与について阻害剤を用いて検討を行っている。セロトニン受容体およびその下流のシグナルの関与に関してはシリアンハムスター精子での検討はほぼ終えており、マウスとラット精子に関して検討を行っていることろである。
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今後の研究の推進方策 |
マウス、ラット、シリアンハムスター精子においてトリプトファンからセロトニンが産生されるのかを更に明らかにするために合成酵素であるトリプトファンヒドロキシラーゼの阻害実験を2022年度で完了させる。 またマウスとラット精子においてトリプトファンによる超活性化運動の促進に関与するセロトニン受容体を確定させる。関与するセロトニン受容体が確定した後、受容体の下流にシグナルについて検討を行う。 マウスとラットを用いてトリプトファンによって超活性化運動を促進させたことで体外受精の成績が向上するか検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
阻害剤などの有効濃度を決める予備実験が少なくて済んだこともあり、想定よりも試薬の購入が少なくて済んだこと、コロナ感染症の影響で現地開催する学会が少なくオンライン開催の学会の幾つかでは参加費も発生しなかったことにより、予定よりも予算を使わずに済んだ。2022年度は体外受精を行うことを計画していて試薬と動物をたくさん使うことを予定しており、2022年度分と合わせて試薬や動物の購入および動物の飼育のために使用する。
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