令和4年度の研究として、私たちは、PLOD2水酸化酵素を阻害するbeat-1ペプチドを口腔・頭頸部癌細胞へデリバリーするため、mRNA-Display技術より口腔癌細胞特異的透過ペプチド(CPP)の単離を実施した。 現在までに、単離されたCPPは、口腔癌細のみならず他の細胞への吸収も認めることから、口腔癌細胞特異的に侵入するCPPの取得には至っていない。一方で、PLOD2発現は、口腔癌細胞株と比較して、骨肉腫細胞株で10以上の高発現を認め、また、beat-1ペプチドの作用が、口腔癌細胞株と同様に骨肉腫細胞株でも認めた。このことから、同時に骨肉腫細胞株へ特異的に侵入するCPPの単離を実施し、正常細胞株や他のがん細胞株へ侵入しない骨肉腫細胞株特異的CPPの単離に成功している。 現在、この骨肉腫細胞株特異的CPPとbeta-1ペプチドを融合したCPP-beta-1デコイペプチドを用いて、骨肉腫細胞のPLOD2を標的とした浸潤・転移阻害、抗腫瘍効果を詳細に評価している。このCPPは軟骨肉腫にも侵入することから、喉頭軟骨肉腫などに対する併用治療にも応用できると考えられる。さらに、CPPの細胞特異的透過性のメカニズムについても現在、検討している。
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