研究課題
リジルオキシダーゼ様因子2 (LOXL2) は転移性の頭頸部扁平上皮がん細胞において発現亢進しており、転移形成以前に転移標的となるリンパ節に作用して前転移期ニッチェ構造の形成に寄与することをわれわれは先に見出していた。さらにこの酵素がエクソソーム様の細胞外小胞画分に局在すること、その含量が頭頸部がん患者血清において亢進していること、特に転移形成以前あるいは転移形成初期の症例においてその傾向が強く、転移との深い関連が示唆されることを報告していた。本研究においては、この因子を標的として未だ実用化を見ない「抗 - 転移治療」の開発を目指した検討を重ねた。今般、本因子と同じく腫瘍微小環境を制御する因子で、細胞内プロトンを排出して細胞内外の pH を制御するナトリウムイオン / プロトン交換輸送体1 (NHE1) を本因子とともに "並列に抑制" された腫瘍細胞が、モデル動物への移植の際、強い抗腫瘍効果を宿主に惹起するという知見を新たに得た。この抗腫瘍効果は、NK 細胞がその主体と考えられ、また腫瘍細胞における PD-L1 量の減少に一部依存しながらそれだけでは不十分であり、LOXL2 の抑制が不可欠と言うものであった。NK 細胞活性の制御機構として、受容体群およびそのシグナルの解析は精力的に行われ、活性化シグナルと抑制シグナルの入力量の兼ね合いによって細胞障害性の発現の有無が規定されると考えられているが、この過程への LOXL2 や NHE1 といった因子の関与については類似の報告がない。サイトカイン等の液性の生理活性物質による誘導と異なり、腫瘍微小環境を標的とすることで NK 細胞活性を制御する、という新たな治療戦略への具体的な端緒を得た可能性がある。
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