研究課題/領域番号 |
21K09658
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
亀倉 隆太 札幌医科大学, 医学部, 講師 (70404697)
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研究分担者 |
一宮 慎吾 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30305221)
高野 賢一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70404689)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Tph細胞 / 老化関連T細胞 / 濾胞外B細胞 / IgG4 / IgG4関連疾患 |
研究実績の概要 |
IgG4関連疾患(IgG4-RD)の病因としてIgG4産生に関わる適応免疫系の機能異常が存在すると考えられているが、未だ病態の全容解明には至っていない。IgG4-RDの病変部位には多数のCD4陽性T細胞の浸潤が認められ、また一方で難治性免疫関連疾患の病態背景にエフェクターヘルパーCD4陽性T細胞が関与することから、我々はCD4陽性T細胞サブセットの一つである末梢ヘルパーT(Tph)細胞に注目してIgG4-RDの病態解析を行っている。CXCR5などのケモカインレセプターの発現パターンからTph細胞は病変部位(リンパ濾胞外)で機能を発揮すると考えられており、特定のB細胞サブセットとの相互作用が推察される。今回我々はTph細胞の制御機構を明らかにするために、濾胞外B細胞(CD19+CD11c+CD21-)に着目して、IgG4-RDにおける濾胞外B細胞の機能的役割やTph細胞との相互作用について検討した。結果、IgG4-RD患者では健常者と比較して血液濾胞外B細胞の割合が増加していた。また血液Tph細胞の割合と濾胞外B細胞の割合との間に有意な正の相関関係を認めた。一方血液濾胞ヘルパーT(Tfh)細胞の割合と濾胞外B細胞の割合との間には相関関係を認めなかった。この結果から、Toll-like receptorを発現する濾胞外B細胞が抗原提示細胞としてTph細胞の分化・増殖に関与している一方で、Tph細胞が抗体産生などの濾胞外B細胞の機能を制御している可能性が考えられた。このTph細胞と濾胞外B細胞との関係は適応免疫と自然免疫のクロストークの一例といえる。Tph細胞はIgG4-RDにとどまらず、他の慢性炎症性疾患の病態形成に関与している可能性があることから、今後も検討を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究成果からIgG4-RD患者では濾胞外B細胞が増加し、血液Tph細胞の割合と濾胞外B細胞の割合との間に有意な正の相関関係が存在するという新しい知見を得ることができた。このことは、IgG4-RDの病態形成において、老化関連細胞であるTph細胞の分化・増殖に濾胞外B細胞が関与していることを示しており、研究課題であるT細胞老化に関連した慢性炎症性疾患の発症メカニズムの解明に向けて大変重要な知見と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1. Tph細胞のトランスクリプトーム解析とパスウエイ解析:IgG4-RD患者群と健常者群の血液からTph細胞(CD3+CD4+CXCR5-PD-1hi)をセルソーターで単離してトランスクリプトーム解析を行い、両群のTph細胞の転写物の比較検討を行う。発現量に差のある候補分子に関してタンパクレベルでの発現量をフローサイトメトリーやELISA法などで検証する。さらに、パスウエイ解析により上位にあるサイトカインなどのエフェクター分子を抽出する。 2. 老化関連細胞としてのTph細胞の表現型や機能の検討:IgG4-RD患者の末梢血または顎下腺の臨床検体からリンパ球を分離し、フローサイトメトリーでTph細胞の向炎症性分子(オステオポンチン、CCL1など)の発現解析を行う。対照として非IgG4-RD(顎下腺炎など)の顎下腺組織、扁桃組織、健常者血液中のTph細胞を用いる。さらに、老化関連Tph細胞の機能解析として、濾胞外B細胞との共培養の系やヒト初代培養顎下腺導管上皮細胞または血管内皮細胞などをターゲット細胞とした細胞傷害アッセイの系で抗体産生誘導能や細胞傷害能について検討する。 3. 老化関連Tph細胞による慢性炎症性疾患の病態形成のメカニズムの検討(動物実験) IgG4-RDモデルマウス(LatY136F変異マウス)を用いたin vivoの系で、ヒト臨床検体での解析と同様に、病変部位のTph細胞が持つオステオポンチンなどの向炎症性分子の産生能、抗体産生誘導能、細胞傷害能がリンパ組織(脾臓、リンパ節)のTph細胞と比較して高いことが確認されれば、病変部位からTph細胞をセルソーターで単離した後、T細胞欠損免疫不全マウスに移入して各臓器にIgG4-RD類似の病変が形成されるかを観察する。
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