研究課題/領域番号 |
21K09835
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮本 洋一 昭和大学, 歯学部, 教授 (20295132)
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研究分担者 |
赤池 孝章 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20231798)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯周病 / 骨吸収 / 破骨細胞 / オステオプロテゲリン / プロテアーゼ |
研究実績の概要 |
骨吸収を担う破骨細胞の分化と活性化は、骨形成を担当する骨芽細胞や骨代謝を調節する骨細胞が細胞膜に発現するRANKLによって誘導される一方、これらの細胞が分泌するオステオプロテゲリン(OPG)によって抑制される。これまで、これらRANKLとOPGの遺伝子発現調節が骨代謝の主要な制御メカニズムと考えられてきた。一方我々は、プロテアーゼによるOPGの分解が新たな骨代謝制御機構であることを提唱した。すでに、歯周病原菌Porphyromonas gingivalis由来のリシン特異的ジンジパイン (Kgp)および好中球エラスターゼがOPGを分解し、破骨細胞分化を促進することを報告した。前者は、システインプロテアーゼ、後者はセリンプロテアーゼである。本研究の目的のひとつは、システインプロテアーゼの活性が活性硫黄分子種による制御を受ける可能性を探ることである。歯周病の病相で働く主要なシステインプロテアーゼとしては、Kgpの他に、破骨細胞自身が分泌するシステインプロテアーゼであるカテプシンK (CtsK) が考えられる。そこで本年度は、CtsKによるOPGの分解活性を評価した。その結果、CtsKは、Kgpやエラスターゼと同様に、OPGのdaeth domain homologous reginを分解することが明らかとなった。CtsKは酸性域で活性が高いことから、吸収窩で骨細胞などが産生するOPGの不活化を担っている可能性が示唆された。また、歯周病性歯槽骨破壊における破骨細胞分化活性化のCtsKによるポジティブフィードバックが病態増悪をもたらす可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周病原菌由来のシステインプロテアーゼであるKgpのみならず、宿主のシステインプロテアーゼであるCtsKがOPGを分解することが明らかとなった。これは、Kgpによる破骨細胞分化および骨吸収活性の促進が破骨細胞由来CtsKによる破骨細胞自身の分化と活性化の促進を行うということを意味している。病原体・宿主相互作用による病態増悪機構が歯周病に存在する可能性を示唆するもので、これまでにない新しい概念である。
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今後の研究の推進方策 |
破骨細胞分化におけるCtsKの関与を明らかにする必要がある。CtsKの発現あるいは活性を低下させた状態で破骨細胞分化を評価したい。また、活性硫黄分子種がKgpやCtsKの活性にどのような影響を与えるかを解析したいと考える。さらに、活性硫黄分子種の産生酵素CARS2/CPERSが破骨細胞分化にどのように関わるかをその発現低下などにより影響を解析したい。
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