研究課題/領域番号 |
21K09941
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
二宮 禎 日本大学, 歯学部, 准教授 (00360222)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | LRP1 / 歯周組織再生 / 歯根膜幹細胞 / 骨芽細胞分化 |
研究実績の概要 |
本研究は、新たな歯周炎治療法および歯周組織再生法を開発するために、歯周組織代謝の調節因子とその作用機序を解明することを目的としている。令和4年度では、主に、Lepr-creマウスとLRP1-floxマウスを交配してLepr陽性細胞からLRP1遺伝子を欠損させたマウスを使用して実験を行った。これまでのin vitro実験によって得られたcKOマウスの歯根膜細胞は、骨芽細胞分化能や石灰化能が低下するという結果を踏まえて、cKOマウスの歯周組織をマイクロCTで撮影して解析を行なった。骨形態計測学的に評価すると、cKOマウスの上顎骨根分岐部の骨量が野生型(WT)マウスよりも減少していることが明らかになった。この骨量低下に伴い、cKOマウスでは、WTマウスよりもセメントエナメルジャンクションと歯槽頂の距離が長くなっており、骨形成が低下または骨吸収が促進している可能性が示された。また、上顎および下顎の骨組織が粗造になっており、cKOマウスの骨質が低下していることが示唆された。さらに、組織化学的評価でも、骨芽細胞に加え、破骨細胞にもcKOマウスとWTマウスの間に差がみられた。これらは、前述のin vitroの結果と一致しており、cKOマウスでは骨芽細胞分化能と石灰化能が低下した結果、骨量の減少がみられたと考えられる。さらに、破骨細胞にも影響がみられたことから、Lepr陽性細胞のLRP1発現が骨芽細胞分化と破骨細胞分化を調節する機能をもっており、骨代謝を制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以前から飼養しているマウスを使った実験は円滑に遂行している。しかしながら、新たな遺伝子改変マウスの実験に関しては、マウスを本学に導入する際に微生物検査で陽性があったため、本学への導入が延期された。再度、導入のためにマウスのクリーン化が必要になったため、想定外の時間を要している。そのため、やや遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
Conventional LRP1ノックアウトマウスは、胎生致死のため、全身でのLRP1の機能を評価するのは困難であるが、Cre-ERT2マウスを用いることで、タモキシフェンを投与した後、全ての細胞からLRP1遺伝子を欠損させることができる。したがって、これまでのようなLepr陽性細胞だけでなく、全身の細胞からLRP1遺伝子を欠損することができるため、骨代謝に対するLRP1の機能を評価することができる。令和5年度は、LRP1-floxマウスとcre-ERT2マウスを交配して、LRP1 cre-ERT2マウスを作製して実験に使用する。 抜歯後の歯槽骨修復の検討:マウスの上顎臼歯を抜歯した後、経日的にマイクロCTおよび免疫組織化学的評価によって検討する。 歯根膜細胞の骨芽細胞分化に対するLRP1シグナルの検討:タモキシフェン投与後、歯根膜細胞を採取して、Aktのリン酸化とLRP1の相互関係を調べる。さらに、歯周組織再生のLRP1シグナルにp53が関与することを明らかにする。これまでに、本申請者は、LRP1陽性間葉系幹細胞(MSCs)は、p53遺伝子の発現が低くなることに加え、p53 KOマウスでは、骨欠損修復が亢進されるという所見を得ている。 LRP1 KO PDLに対して、炎症性サイトカインやPI3K阻害剤AS605240、さらにWntシグナル阻害剤DKKを用いて、Wntが介在するp53とLRP1の相関関係を明らかにする。本実験によって、詳細にLRP1による歯周組織制御メカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度には、動物飼養施設を移転するために生じるマウスのクリーン化が必要とされたが、事前にクリーン化に必要な胚作製、胚からの個体作製、凍結保存、微生物検査、マウスの輸送などにかかる費用を計上していたため、計画通りに研究費を使用することができた。また、消耗品を予定よりも安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。この繰越しとなった費用は、令和5年度の助成金と合わせて、機能学的解析および形態学的解析に必要な消耗品の購入に使用する予定である。
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