研究実績の概要 |
研究対象として10、20、40週齢のSTR/ortマウス(以下STR/ort群)、コントロールとして同一週齢のCBAマウス(以下CBA群)を用いた。各週齢で両群のマウス頭部をEDTAで脱灰してパラフィン包埋し、5μm厚で薄切して染色用のプレパラートを作製した。Safranin-O 染色を行い、OARSI評価を使用して顎関節OAを形態学的に評価した。次にMMP-12、IL-6、ADAMTS-4、5の発現について免疫組織染色を用いて両群を各週齢で評価した。以下に結果を示す①Safranin-O 染色では、STR/ort群の20週で軟骨のプロテオグリカンの消失を認め、40週ではクレフトを伴う下顎頭軟骨破壊が認められた。 ②OARSIスコアは、CBA群では加齢に伴う有意な差は認められなかったが、STR/ort群では加齢に伴って有意に高くなっていた。③MMP-12は、STR/ort群で20週の下顎頭表層の軟骨細胞と下顎頭軟骨下骨の骨芽細胞様細胞と破骨細胞様細胞で発現し、40週ではさらに増加していたが、CBA群では発現していなかった。④IL-6は、両群で20週以降の下顎頭表層の軟骨細胞に発現し、40週では増加していたがCBA群と比較してSTR/ort群で有意に高く、下顎頭軟骨下骨の骨芽細胞様細胞と破骨細胞様細胞での発現は、STR/ort群のみで、加齢に伴って発現が増加していた。⑤ADAMTS-4,5は、両群で20週以降の下顎頭軟骨全体で発現し、表層部の軟骨細胞での発現は40週齢で増加していた。20週齢以降のADAMTS-4,5の発現は、STR/ort群でCBA群よりも有意に高かった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、①PCRの発症におけるメカニカルストレスの役割、②PCRにおけるアグリカネーゼの役割と選択的アグリカネーゼ阻害[-1A]TIMP-3の遺伝子導入)による軟骨破壊の抑制効果、③下顎頭の外側翼突筋付着部におけるスクレラキシス、SOX9の発現状況について1)マウスの作製:メカニカルストレスとして装置による下顎前方牽引(前方牽引群)、下顎骨切りによる一期的な下顎前方移動(手術群)を行い、a)未処置群、b)前方牽引群とc)手術群、[-1A]TIMP-3遺伝子改変を付与したd)[-1A]TIMP-3未処置群,e) [-1A]TIMP-3前方牽引群,f) [-1A]TIMP-3手術群の計6群を作製する。未処置群は10、20、40、60週齢、前方牽引群は10週齢から定期的に刺激を加え20週齢、手術群は10週齢で手術を行い20週齢で標本を作製する。2)ヒトPCR手術組織:リバプール大学附属病院で行われたPCRに対する顎関節解放手術の組織を用いる。3)Genotyping: [-1A]TIMP-3 STR/Ortマウスのgenotypingを行い、[-1A]TIMP-3遺伝子の定量と各評価項目との関連性を検討する。4)画像解析:動物用micro CT装置を用いて下顎頭について解像度5μmで下顎頭形態と骨密度を評価する。in vivoでmicro MRI装置を用いて下顎頭骨変化や関節円板転位を評価する。5)遺伝子発現解析:下顎頭軟骨組織を液体窒素で粉砕し、RT-PCR法で[-1A]TIMP-3,各種MMP,ADAMTS4/5の遺伝子発現量を測定する。同様の方法で下顎頭外側翼突筋付着部組織からスクレラキシス、SOX9の遺伝子発現量を測定する。6)細胞培養:腱細胞を単離して、multi-network chamberを用いたShear-Stress Modelにて、機械圧の変化におけるスクレラキスの発現を観察する。7)病理組織学的解析:マウスおよびヒトの下顎頭組織をサフラニンO染色にて軟骨破壊を観察し、[-1A]TIMP-3、1,2型コラーゲン、骨形成マーカーを免疫染色で発現を観察する
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