研究課題
[目的] AC5とEpac1は密接に関連していることを我々は先行研究で明らかにしている(Cai et al. BBRC 2016)。「咬合異常(BO;Bite-opening)による心不全ならびに心房細動の発症に、AC5-Epac1経路が重要である」という仮説の検証を、野生型マウス(C57BL/6)を用いてビダラビンの慢性投与を行い検討した。[方法] 雄16週令のC57BL/6マウスを1)コントロール(CTRL)群、2)BO群、3)ビダラビン投与群(15mg/kg/day)、4)BO+ビダラビン投与群の4群に分けた。14日間のビダラビン投与後に生理学実験(心エコー、心房細動)を行った。生理学実験終了後に心臓組織(心筋、心房)を摘出した。[結果] 1)令和3年度に行った実験結果より、CTRL群に比較してBO群で心機能(心拍出量)は有意に低下、心臓線維化(マッソントリクローム染色)ならびにアポトーシス陽性心筋細胞(TUNEL染色)は有意な増加が見られたが、その効果はビダラビン投与で有意に抑制されていた。2)令和4年度は前年度に組織学的手法で確認されたビダラビンの心臓線維化ならびにアポトーシスに対する影響を線維化マーカー(α-SMA)、アポトーシス関連タンパク(Bax/BCL-2比)を用いてウエスタンブロッティングを用いて検証した。3)ビダラビンによる心筋保護効果として酸化ストレスが重要な役割を果たしているという仮説をたて酸化ストレス陽性心筋細胞(8-hydroxy-2’-deoxyguanosine (8-OHdG) 免疫染色)ならびにOxiSelect TM protein kitを用いて酸化タンパク質の量を確認したところBO群で見られた酸化ストレスの増加はビダラビン投与で有意に抑制されていた。
2: おおむね順調に進展している
1)AC5阻害作用を持つビダラビンにより咬合異常による心機能障害ならびに心臓線維化が抑制されていることを組織学的ならびに生化学的手法を用いて検証した。2)咬合異常に起因する心機能障害は酸化ストレスが重要な役割を演じていること、ビダラビンによる心臓保護効果のメカニズムとして抗酸化作用が重要であることが明らかになった。
2023年度は、咬合異常がどのようなメカニズムで酸化ストレスを誘発しているか、ビダラビンはどのようなメカニズムで咬合異常に起因する酸化ストレスを抑制するかを明らかにする。またBOによる心房細動の発症がビダラビンならびに水溶性を高めた新規ビダラビン化合物(特許登録:5489336)で抑制されるかを検討する。
1)次年度使用が生じた理由:ビダラビンによる心臓保護効果のメカニズムとして抗酸化作用であることを検証するため8-OHdG免疫染色とOxiSelect TM Protein Carboxyl Immunoblot kit (Cell Biolabs))を用いた酸化タンパクの定量評価で検証したが、特に8-OHdG免疫染色の実験条件の決定に時間を有したため。2)次年度の実験計画:今年度までに確認された実験データの再現性を確認する。また単離心筋細胞ならびに単離心房筋細胞を用いた解析ならびに心室筋と心房筋のスキンド標本を用いた解析を行いビダラビンの心臓保護効果の検証を行う。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
PLoS One
巻: 17 ページ: e0258823
10.1371/journal.pone.0258823
J Physiol Sci
巻: 72 ページ: 2
10.1186/s12576-022-00826-4