研究実績の概要 |
Netrin-1はDCC, Unc5,DSCAMそして Neogeninなどの受容体と結合し,リガンドとして働く.悪性腫瘍においてNetrin-1と結合したDCCやUnc5は腫瘍細胞の悪性度を亢進すると言われる.一方で,DCCをコードする遺伝子の機能喪失変異が大腸がんをはじめとする多くの悪性腫瘍発生の誘因となることから,DCCはがん抑制因子としてみなされている事実がある.実際,メラノーマの原因となる遺伝子変異の中でDCCの機能喪失変異が3番目に多い.このようにリガンドであるNetrin-1と受容体のDCCではメラノーマ細胞の挙動において相反した作用を持つが,そのメカニズムの解明は不十分であり,さらに他のNterin-1受容体,すなわちDSCAMやNeoを対象とした研究も進んでいない. BMPは当初骨形成タンパク質として発見されたが,近年BMPはSmad1/5シグナル伝達経路を介して上皮間葉転換により,メラノーマの骨浸潤を誘導することが報告された(Gao J et al., 2021). われわれはこれまでに,Netrin-1の過剰発現でBMPの補助受容体としても知られるNeoの発現が上昇し,またNtrin-1の過剰発現はBMPが誘導するId-1のレポーター活性を濃度依存性に亢進させた.しかしながらこれまでに20種類近くのBMPが存在することから,どのBMPがメラノーマの悪性度に影響するかを同定する必要がある.そこで今年度は実際のメラノーマ患者の予後とメラノーマ組織における各種BMPの発現量との相関を調べた.すると,BMP4は,発現量が高い方ほど予後が悪く,逆にBMP3bに関しては発現が低い方ほど予後が悪いことがわかった.BMP2, BMP3, BMP5, BMP7, BMP9に関しては,メラノーマにほとんど発現がないか,もしくは発現量と生命予後と関連が認められなかった.
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