研究実績の概要 |
本研究では、昨年度までに歯科医療従事者のB型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)の感染率を調査し、肝炎とその予防に関する教育を行った[Nagao Y, et al, BioMed Rep 14, 2021][Nagao Y, et al, Cureus 14, 2022]。今年度の研究では、新たに1,920人の歯科医療従事を対象にHBVおよびHCV感染率とHBワクチン接種率との関連を調査した。調査対象者には、486人の歯科医師と1,434人の歯科スタッフが含まれ、匿名データが収集された。 解析の結果、HBs抗原、HBs抗体、HCV抗体陽性率はそれぞれ0.5%、39.7%、0.6%であった。また、歯科医師は、HBs抗体陽性率(53.9% 対 34.9%、p<0.0001)およびHCV抗体陽性率(1.4% 対 0.3%、p=0.0080)が歯科スタッフよりも有意に高率だった。さらに、HBワクチン接種歴を判明できた1,395人のうち、接種率は59.1%であり、歯科医師の接種率がスタッフよりも有意に高い結果を示した(73.6% 対 54.0%、p<0.0001)。ワクチン接種群では、年齢が若く(p<0.0001)、男性の割合が高く(p=0.0022)、歯科医師が多く(p<0.0001)、HBs抗原陽性率が低く(p<0.0097)、HBs抗体陽性率が高い値を示した(p<0.0001)。一方、ワクチン未接種群では、HBs抗原およびHBs抗体陽性率が年齢と共に増加することがわかった(70歳代では、HBs抗原陽性率は3.8%、HBs抗体陽性率は40.4%、80歳代ではHBs抗体陽性率が66.7%)。 以上の結果から、歯科医療従事者におけるHBワクチン接種の重要性が示され、今後の適切な啓発活動や支援の必要性が示唆された。
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