研究課題/領域番号 |
21K10311
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井澤 美苗 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 研究員 (10338006)
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研究分担者 |
青森 達 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (40620802)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ノセボ研究 / 個体間変動要因 / ノセボ効果のメカニズム |
研究実績の概要 |
ノセボ効果の研究として、2022年度から健康成人を対象に臨床研究を実施している。2022年度に実施した被験者43名に引き続き、2023年度は74名を実施した。解析については2023年度に実施した74名のうち44名と2022年度に実施した43名を合わせた87名についてデータ解析をした。 被験者87名を、カフェインの副作用(動悸・胃部不快感・心拍数増加)についての説明を受ける群(A群N=44)と受けない群(B群N=43)に無作為に割り付け、カフェイン約 162 mg 含有のコーヒーを摂取させた。主観的指標として動悸・胃部不快感を Visual Analog Scale (VAS)、状態不安を State-Trait Anxiety Inventory を用いて評価した。客観的指標として心拍数、交感神経・副交感神経バランス (LF/HF) を測定した。各指標のコーヒー摂取前後の変化量を算出して群間比較した。 動悸は説明を受けないB群に比較して説明を受けたA群がより強く感じる傾向にあった。胃部不快感はB群に比較してA群が有意に高かった。一方、心拍数は両群とも同程度に低下した。状態不安はB群でより減少する傾向にあり、ストレスの客観的指標である LF/HF はB群でより減少した。これらは、コーヒーにより不安が緩和し、A群ではそれに副作用説明が拮抗したためと考えられた。カフェインの副作用説明によるノセボ効果は主観的指標において観測され、客観的にもコーヒーのストレス緩和作用を拮抗する傾向がみられた。 また心理的に引き起こされるノセボ効果は、パーソナリティや過去の副作用経験、catechol-O-methyltransfera se で代表される脳内化学伝達物質の遺伝子型に影響されるといわれており、本研究ではノセボ効果の個体間変動要因についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度までに目標数120例を実施する予定でいたが、120例までに3例足りなかった。117名については臨床試験を実施した。 脳内化学伝達物質の遺伝子型については、catechol-O-methyltransferase については2/3の被験者の遺伝子型を判定したが、残りの判定及びセロトニントランスポーター遺伝子型やコレシストキニン遺伝子型については現在実施中でまだ全ての判定が終了していない。 パーソナリティについても未解析である。
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今後の研究の推進方策 |
残る3例のついての臨床試験を実施し、合計120例についてデータ解析を行う。 引き続き、主観的評価と客観的評価項目について解析し、ノセボ効果の現れ方を検討する。合わせてパーソナリティや遺伝子肩について解析し、ノセボ効果の個体間変動要因について検討する
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19感染の影響で、臨床試験の開始が1年遅れたため、目標例数の臨床試験が実施できなかった。 追加の臨床試験を実施し、未実施の遺伝子判定、全例のデータ解析をするため次年度に予算を使用する予定である。
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