研究課題/領域番号 |
21K10365
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構南和歌山医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
土生川 千珠 独立行政法人国立病院機構南和歌山医療センター(臨床研究部), 臨床研究部, 医長 (20258015)
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研究分担者 |
小柳 憲司 独立行政法人国立病院機構南和歌山医療センター(臨床研究部), 臨床研究部, 研究員 (00728850)
永光 信一郎 福岡大学, 医学部, 教授 (30258454)
村上 佳津美 独立行政法人国立病院機構南和歌山医療センター(臨床研究部), 臨床研究部, 研究員 (50219888)
柳夲 嘉時 関西医科大学, 医学部, 助教 (90610353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 学校健診 / 思春期 / 不登校 / 心身症 / 医療連携 / 早期介入 |
研究実績の概要 |
思春期は、いじめや家庭の問題、進路の悩みなどが心に影響し、腹痛・頭痛・立ちくらみなど起立性調節障害と言われる身体症状(心身症)を呈し、不登校や自殺につながりやすい。教育と医療が連携して早期介入する学校健診を、私たちは平成30年から3か年、本研究費(課題番号18K09962-0001)の助成で開発し、小中学生3914人に、その有用性を実証した。学校での質問紙活用と、医療機関での早期介入で、不登校が予防できることが明らかとなった。一方、新たな課題として、全国的に実装するには、学校での対応マニュアルとプライマリケア医のための心身症診療機器の整備と心身症診療マニュアルの作成であることが明確になった。本学校健診を社会実装させるために、2021年度の研究目的は、1)家庭と教育機関が連携した思春期心身症への学校用対応マニュアル作成する。2)プライマリケア医用の心身症診療用の医療機器整備と、診療教育システムを構築する。 2021年度は、教育機関における対応整備を実施した。 学校健診に参加した和歌山県の教育機関において、健診に使用した質問紙QTA30と家庭、医療機関と連携した心身症に対する対応マニュアルを作成し、説明を実施した。加えて、医療機関における対応整備を実施した。学校健診に参加した和歌山地区の医師会・小児科医会・プライマリケア医および学校医に対して心身症診療マニュアルを作成し、子どものこころ専門医による心身症診療動画および診療手引きを作成し配布した。講習会の実施に関しては、コロナウイルス感染予防措置のために、対面式の講習会を控え、作成した動画を各学校健診後の受診先の医師に対して、配布し説明を実施した。 教育機関と医療機関が連携した本健診システムの検証のために、和歌山地区5市町村の指定校において、学校健診を実施し、不登校のハイリスク児に対して、医療機関と連携するシステムの稼働性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、教育機関における対応整備を実施した。 学校健診に参加した和歌山県の教育機関において、健診に使用したQTA30に対する説明と家庭、医療機関と連携した心身症に対する対応マニュアルを作成し、説明を実施した。加えて、医療機関における対応整備を実施した。学校健診に参加した和歌山地区の医師会・小児科医会・プライマリケア医および学校医に対して心身症診療マニュアルを作成し、子どものこころ専門医による心身症診療動画および診療手引きを作成し配布した。講習会の実施に関しては、コロナウイルス感染予防措置として、対面式の講習会を控え、動画作成し、各学校健診後の受診医に対して、配布し説明を実施した。 教育機関と医療機関が連携した本健診システムの検証のために、和歌山地区5市町村の指定校10校において、健診参加者(236名)学校健診を実施し、32名の不登校のハイリスク児に対して、医療機関と連携するシステムの稼働性を確認した。ハイリスクとして検出された児の比率は、13.5%であった。ハイリスク検出された児は、指定医療機関を受診し、1年間の早期医療介入を予定している。 本健診への説明は、和歌山地区7市町村の教育委員会に連絡し説明を実施した。2021年度の学校健診に参加を希望しなかったのは2町であった。不参加の理由は、1)指定校のみの健診では町全体では不平等となることへの懸念 2)こころに問題を抱える子どもは親が対応するべきことであり、学校ではこころ問題についての早期介入は実施しないとの回答であった。健診実施校において、本健診への参加同意者率は78%であった。参加を希望しなかった家庭の意見は、1)子どもが嫌がる 2)親が必要性を理解しにくい 3)医療機関への受診が面倒 等の意見があった。不参加者の中には、教員が生活スタイルやこころの問題を抱えていることが懸念される事例が含まれていた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度からの研究は、教育機関との連携については、学校健診に参加した学校の教員からは、今まで、こころの問題を抱えていると認識していても介入することができずにいた子どもや保護者に対して、健診結果をきっかけに介入することができたとの報告が多かった。2021年度に本健診を実施しなかった1町については、町全体の小学5年生から中学3年生まで全員に実施することで、2022年度は実施することが決定された。本健診は、現在登校ができている子どもが抱えるこころの問題を予防的に早期検出できるため不登校予防支援としての有用性が高いのが特徴である。こころに問題をもつ思春期の子どもは、親との距離も離れ、自分の気持ちを言語化し、親を含めた周囲の大人たちには伝えないことが特徴であり、家庭のみならず教育機関においてもこころの問題を抱える子どもについてのアドボカシー教育と啓発活動が必要であると考えている。 医療機関との連携については、学校医が受け入れ困難な町では2次病院の小児科医が受診先となり、連携が可能であった。さらに子どものこころの専門医との連携が必要な症例については、当院で介入を実施することでシステムの稼働性を検証できた。今後、本健診の実施を広めていく中でも小児科専門医以外の医師が介入しやすいように説明が必要であると考えている。 本健診で使用している質問紙のアプリ化はできておらず課題が残るため、新たな質問紙を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学校健診システム開発・管理費の支払いのため
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