研究課題
不登校数は、令和3年度24.4万人と前年度から5万人超増加し、中学生全体数の4%超である。不登校前は、身体症状を認めるが80%超は適切な医療享受ができていない。適切な医療享受ができなかった身体症状に早期医療介入し不登校を予防するために、私たちは平成30年から本研究費(課題番号18K09962-0001・21K10365)の助成で、教育と医療が連携して早期医療介入する学校健診システムを開発してきた。方法は、学校で子ども自身が質問紙に回答し、ハイリスクの子どもには校医を受診するように促し、医療機関で身体症状に早期介入するシステムである。2022年度までに7539人を対象に健診を実施し、子ども自身が記入する質問紙と医療機関での早期介入が不登校予防に有用であることを証明した。一方、全国的に本健診を実装するため課題が表在化した。1)ICT(Information and Communication Technology)用新質問紙開発質問紙(QTA30)はICTで使用できないため新質問紙を開発する必要がある。新質問紙の項目は、QTA30 4512名分の蓄積データからハイリスク群に影響する項目を抽出し、加えてQTA30では検出できない子どもの発達特性を検出する項目を追加し、48項目の新質問紙を作成した。2)小児科医以外の校医用マニュアル作成2021年度に校医用のマニュアルを作成し、ハイリスク児の受診先である校医(小児科医)が実用できることを検証できた。今後、全国で本健診を実施するためにハイリスク児の受診先である校医へ依頼するために医師会へ説明したが、内科・整形外科・眼科など小児の診療に不慣れな校医が80%おり、小児医向けの診療マニュアルでは実動できないという意見がでたため、小児科以外の校医向けのマニュアルを作成した。
2: おおむね順調に進展している
2022年度は、1)ICT(Information and Communication Technology)用新質問紙開発として、QTA30の4512名分の蓄積データからハイリスク群に影響している質問項目を抽出した。質問項目は、1)ライフスタイル(睡眠・食事)2)身体症状 3)学校適応(多動・衝動・自己効力感)4)不安・敏感性(発達特性)5)家庭問題(ヤングケアラー・家庭不機能)の5項目について計48項目を作成した。作成した新質問紙と現行質問紙であるQTA30の関連性を検討するために、学校健診2984名および心身症専門病院の通院児229名に対して2種類の質問紙を実施し関連性を検討した結果(r=0.84)と高い関連性を認めた。2)小児科医以外の校医用マニュアルを作成。校医の専門別に介入ステップを作成した。小児科医以外の校医は、心身相関で表面化した身体症状に介入するだけとし、再診時症状が軽快しないときには、2次病院小児科へ身体精査を依頼する。2次病院小児科で身体精査に加え包括的診察を実施した後、子どものこころ専門医(小児科医)へ紹介する。精神疾患が疑われる際には、子どものこころ専門医(精神科医)へ紹介する。校医が診療方針において相談したい際には、専門医が回答するメール相談システムを作成した。
2023年7月までの1学期で3000名(小学5年生から中学3年生)の学校健診の実施を予定している。作成した新質問紙の完成を学校健診で使用し、1)48項目について因子分析を行い抽出因子の検討 2)カットオフ値を設定 3)再現性の検証 4)地域格差の検証を実施し、完成を目指す。さらに、小児科医以外の校医への診療マニュアルの稼働性を検証する。2学期以降、地域を拡大し学校健診を実施する。本健診は全国での実装を目指しているため、各都道府県行政・専門医・教育委員会などへの普及活動について検討予定である。
ICT(Information and Communication Technology)用新質問紙の開発中であったため来年度に学校健診実施予算を移行した。
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