研究実績の概要 |
本研究は、埼玉県内の環境及び臨床由来ESBL産生 E. coliを対象として薬剤感受性試験、耐性遺伝子解析及び全ゲノム解析を行い、各分野の薬剤耐性の状況や相互の関係性を明らかにすることを目的とする。本年度は、2020年10月より10, 12, 2, 4, 6, 8月の計6回、下水処理場(埼玉県 中川循環センター)の流入水2Lを採取し、ESBL産生Escherichia coli 23株を分離した。臨床由来ESBL産生 E.coliについては、当該下水処理場の流域下水道処理区域内の病院から同時期に分離された55株がいかなる患者情報も伴わない形で分与された。これらの下水由来株と臨床由来株を対象として薬剤感受性試験および薬剤耐性遺伝子検出を実施した。TEM型, CTX-M-1group, CTX-M-9group, SHV型, CTX-M-2group, CTX-M-8groupを標的遺伝子とするコロニーダイレクトMultiplex PCR法により遺伝子型の簡易型別を行った結果、下水由来株については、CTX-M-9groupが最も多く52.2% (12/23株)、次いでCTX-M-1groupが39.1% (9/23株) であった。臨床由来株についても同様にCTX-M-9groupが最も多く63.6% (35/55株)、次いでCTX-M-1groupが32.7% (18/55株) であった。詳細な遺伝子型を決定していないため、正確な判断はできかねるが、臨床で感染症を起こした菌株と同様の薬剤耐性遺伝子型を保有するESBL産生 E. coliが環境にも出回っている可能性が示唆された。詳細な遺伝子型を決定し、さらにMLSTによる菌株の系統解析を進めていく。
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