研究実績の概要 |
本課題検証のための認知症移行者候補への直接面談がCOVID19の影響で思うように進まない中、 本研究ではInformant questionnaire on cognitive decline in the elderly日本語版(IQCODE-J)によるアンケート調査をもって直近10年間での認知症移行者を推定し、その関連因子を調べる方針に切り替えた。一般住民を対象とした先行研究に則りIQCODE 平均値閾値は3.3とした。除外基準を満たした32名を除く1,698名に対し受診日から約10年を経過した段階でIQCODE-Jのアンケートを送付した。有効回答を得られた686名(平均年齢58歳、男性50%)を解析対象とし、IQCODE 平均値3.3以上を認知機能低下群(decline group)、閾値未満を認知機能非低下群(non-decline group)とした。Decline groupはnon-decline groupに比べ、年齢と血圧値が高く, 教育歴、MMSEが低かった。また高血圧、脳微小出血、白質高信号、包括的な脳小血管病負債の指標であるtotal SVD score 2以上の頻度がDecline groupで高かった。 ロジスティック回帰分析では、Crudeモデルで年齢、血圧値、高血圧、教育歴、MMSE、脳萎縮、脳微小出血、白質高信号、total SVD score 2以上がDecline groupに関連していた。しかし、年齢、高血圧、教育歴で調整した多変量解析では年齢のみが認知機能低下の関連因子として残った。結果として、我々の仮説としていたベースラインのSVD負債(total SVD score2以上)が将来の認知機能低下に寄与することは証明できなかった。
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