研究実績の概要 |
高齢社会日本において、脳卒中死の予防、より有効な治療法の開発が重要である。本研究の目的は、日本国民にとって最も身近な薬物であるアルコールが脳卒中の予後に大きく影響する脳浮腫の形成にどのように関与するのか、その機序解明を目指すものである。本年度は、既報に従って単離した初代培養アストロサイトを使用した実験の解析を行った。初代培養アストロサイトは、安楽死させた新生仔ラットの脳を抽出し、髄膜等を除去した後、メッシュ破砕を行って、遠心等の処置を施行して培地に播種した。その後、PLLコーティングプレート処置等によりアストロサイトを単離した。アストロサイトに対し、培地中にエタノールを0から100mMの濃度で反応させ、エタノールに対するアストロサイトのアクアポリン4発現に及ぼす影響を検討した。また、上記動物実験により作成した梗塞脳を摘出し、梗塞巣に集積したマイクログリアを単離して、初代培養アストロサイトとマイクログリアとの共培養実験を行った。初代培養アストロサイトの培地にエタノールを0, 10, 25, 50, 100mMの濃度で添加して、アクアポリン4mRNA発現を検討したところ、エタノールの比較的低濃度群では、コントロールに比べ、低下し、高濃度では発現が増大した。初代培養アストロサイトとマイクログリアの共培養実験で、同様にエタノールを負荷するも、特に変化は認められなかった。来年度は、グリンファティックシステムの関与につき検討を行う予定である。
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