研究課題/領域番号 |
21K10527
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
谷 直人 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (00802612)
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研究分担者 |
池田 知哉 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (10620883)
石川 隆紀 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (50381984)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 薬物中毒 / 薬物代謝 / 時計遺伝子 / 覚醒剤 / 肝臓 / 培養細胞 / バイオマーカー / 向精神薬 |
研究実績の概要 |
時計遺伝子は薬物代謝酵素であるシトクロムP450(CYP)の活性や,トランスポーターの発現に24時間周期の変動を引き起こすことにより,薬物代謝と排泄に影響を与えることが知られている.そこで,本研究では薬物代謝における時計遺伝子の役割について解析する. まず,我々は覚醒剤中毒に着目し,肝臓における覚醒剤の代謝に関与する酵素であるCYP3A4およびCYP2D6と時計遺伝子BMAL1およびPER2の関係を調査した.その結果,覚醒剤低濃度で死亡している症例は午前に多く,その時間帯におけるBMAL1の発現は低かった.また,覚醒剤高濃度で死亡している症例は午後に多く,その時間帯におけるPER2の発現は低い傾向がみられた.覚醒剤による死亡のリスクに時計遺伝子が関与している可能性が考えられた.一方,BMAL1およびCYP2D6の発現は血中覚醒剤濃度が中等度から重症度域で高く,致死域で低下する傾向がみられた.PER2 およびCYP3A4の発現は,血中覚醒剤濃度が上昇するにつれて増加し,血中覚醒剤濃度が致死域で最高値を示した.培養細胞実験において,肝癌由来であるHepG2細胞にメタンフェタミン(MA)添加すると,添加後の経過時間に依存し,BMAL1およびCYP2D6の発現は低下した.PER2および CYP3A4の発現はMA濃度依存的に極軽度上昇した.siRNA導入によるBMAL1抑制下では,CYP3A4およびCYP2D6の発現は上昇した.PER2抑制下においてもCYP3A4の発現は上昇した.一方,PER2抑制下のCYP2D6はMAの影響を受けなかった.また,PER2抑制下のCYP2D6を除くCYPsの発現は,BMAL1およびPER2の発現抑制下でMAの影響を受けやすいことが示された.これら結果から,覚醒剤の代謝に対し,CYPは時計遺伝子を介して制御されていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの進歩状況として,肝臓の時計遺伝子発現と覚醒剤中毒死の死亡時刻に概日周期が認められ,覚醒剤中毒死のリスクと死亡時刻の関係性が推測された. ヒト肝臓組織を用いた結果では,BMAL1およびCYP2D6の発現は血中覚醒剤濃度が中等度または重症度域で高く,致死域で低下する傾向がみられた.一方,PER2 およびCYP3A4の発現は,血中MA濃度が上昇するにつれて増加し,血中覚醒剤濃度が致死域で最高値を示した.肝癌由来であるHepG2細胞を用いた実験では. メタンフェタミン(MA)添加後の経過時間に依存し,BMAL1およびCYP2D6の発現は低下し,PER2およびCYP3A4の発現は,上昇の幅は小さいものの濃度依存的に極軽度上昇した.これらの結果から,覚醒剤が時計遺伝子と薬物代謝酵素(CYP)の発現に影響を与えることが示唆された. siRNA導入によるBMAL1抑制下では,CYP3A4およびCYP2D6の発現は上昇した.同様に,PER2 抑制下においてもCYP3A4の発現が上昇した.一方,PER2抑制下のCYP2D6の発現は上昇せず,MA添加後も遺伝子発現は変化しなかった.また,PER2抑制下のCYP2D6を除く,CYPsの発現は,BMAL1およびPER2抑制下でMAの影響を受けやすくなることが示された. これらの結果は,CYPsが時計遺伝子フィードバックグループによって制御されることを明らかにし,CYPは時計遺伝子の制御下でMAに対して反応していることが示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
ベンゾジアゼピン系の向精神薬は時計遺伝子の発現に影響することが報告されており,今後は向精神薬であるベンゾジアゼピン系の薬物などに着目し,ヒト組織における時計遺伝子発現への影響を調査する予定である.また,肝臓のみならず,脳などの他の組織における時計遺伝子発現への影響なども同時に解析し,中毒死リスクの評価や,薬物摂取時刻の推定なども検討していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,初年度に購入する予定であった培養細胞を購入しなかったため,次年度使用額が発生した。次年度において,各種臓器由来の細胞を購入し,研究に使用する予定である.
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