研究実績の概要 |
飛沫に暴露するリスクがある口腔ケアや喀痰吸引において、着用するガウン表面へのウイルスの付着量が多い場合、二次感染をおこすリスクがある。令和5年度は、防水タイプ、撥水タイプ、プラスチックエプロンの3種のガウンを対象に、ガウン表面への模擬唾液中バクテリオファージの付着性を比較した。 模擬唾液はキサンタンガムを主成分とする介護用とろみ調整食品1gを滅菌生食水100mLに溶解したものを用いた。模擬唾液中にbacteriophage PhiX174 (ATCC 13706-B1)を1000000 plaque forming unit (PFU)/mLの濃度になるように混和した。無菌的にカットした各ガウン片に10μL滴下し、直ちに液滴を除去後、ガウンに付着したバクテリオファージを液体培地中に溶出した。指示菌のEscherichia coli (ATCC 13706)とデゾキシコレート培地を用いてプラークアッセイ法を行い、ガウンに付着したバクテリオファージ数を計測した。 実験の結果、バクテリオファージの付着数(PFU, 平均±標準偏差)は、防水タイプが1815.0±458.2、撥水タイプが575.0±276.3、プラスチックエプロンが85. 0±77.2であった。一元配置分散分析と多重比較検定(Tukey)により、防水タイプガウン表面のバクテリオファージ付着数は、撥水タイプガウンとプラスチックエプロン表面の付着数に比べ有意に多かった(p<0.01)。 今回の実験により、模擬唾液中のバクテリオファージは、防水タイプガウン表面への付着性が高いことがわかった。唾液などに含まれるウイルスは特に防水タイプガウンに付着しやすいことがわかったため、口腔ケアや喀痰吸引などにおいて防水タイプガウンを着用した場合、ガウン表面の汚染に対し十分注意を払い、正しい手順や方法で脱衣することが重要であることが示唆された。
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