研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)の免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)は、発症の時期予測/予防が難しく早期発見・対処が非常に重要で、患者・家族のセルフモニタリングが大きな鍵となる。 irAEの患者説明資料の多くは、「いつもと違うと感じたら連絡してください」などの表現が多く、患者・家族は遠慮や相談すべき「いつもと違う」状況がわからず、相談が遅れ重症化する可能性がある。 そこで、「いつもと違う」を具体的にし、患者・家族のセルフモニタリング感度向上が必要だと考えた。本研究は、電子カルテの経過記録のうち主観的情報から、各irAEに特異な症状を抽出し、その表現を具体的に示すことを目的とした。 対象施設でirAEの診断を受けた患者を対象に、ICIによる治療開始から診断までの主観的情報をテキストデータとして収集し、KH Coderにより計量テキスト分析した。 対象は78人で、irAEは、腸炎、肺臓炎、皮膚障害など13種であった。収集したテキストデータは読点で区切った文単位を分析対象とし、総数5,406文となった。各irAEに特異な症状として、1型糖尿病は口渇/目の霞/血糖値の上昇、下垂体機能低下症は視力の低下、筋炎は瞼が重い/足が上がりにくい/複視、血管炎は内出血斑/耳痛/亀頭の痛み、腸炎は下血、発熱は発汗、皮膚障害は皮疹・蕁麻疹/皮膚乾燥・掻痒感/水疱/目の充血、副腎機能不全はふらつき・眩暈/意識消失が抽出でき、主観的情報から得た患者・家族の表現の具体をまとめた患者説明用の図表を作成した。一方、倦怠感・疲労感、食欲不振などICI以外の抗がん薬でも発現する症状では、特異な表現は見いだせず、医療者はirAEの可能性を考え、注意深く患者と対話し症状を観察する必要性が示唆された。
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