研究課題/領域番号 |
21K11261
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石津 洋二 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (90648734)
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研究分担者 |
本多 隆 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (10378052)
梅垣 宏行 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (40345898)
山本 健太 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (80852582)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サルコペニア / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
R3年度は、サルコペニア患者に対する忍容性のある運動栄養療法の開発、および基礎データとして腸内細菌叢と運動栄養療法の効果との関連性について研究を行った。運動療法に関しては、汎用性を考慮し、自宅で行うことが可能な内容で開発を行った。サルコペニア患者は筋力や運動能力が低下していることから、強度の運動は困難であり、また運動により怪我などの合併症が生じうる。そこで運動強度を自己調節することが可能なゴムバンドを用いたエクササイズを作成し、これに分岐鎖アミノ酸による栄養療法を加えた運動栄養療法を開発した。次に、3か月間の運動栄養療法をサルコペニア合併肝硬変患者17例に導入し、運動栄養療法の忍容性を評価した。結果は、2例が希望により治療中断となったが、15例が合併症なく3か月間の運動栄養療法を完遂することができ、さらに半数で筋力の増加が確認された。次に、運動栄養療法と腸内細菌叢との関連性について解析した。まず運動栄養療法の前後における腸内細菌叢を比較したところ、有意な変化を認めなかった。このことから、3か月という短期間の運動栄養療法では腸内細菌叢に与える影響は少ないことが明らかとなった。また、運動栄養療法により筋力が増加した群と増加しなかった群に分け、介入前の腸内細菌叢を比較したところ、複数の腸内細菌叢において、有意な差を認めた。さらに、それらの細菌叢が有する予測遺伝子を比較したところ、アミノ酸合成に関する遺伝子量に違いが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究により、サルコペニア患者において酪酸産生菌であるPrevotella属の細菌が減少していたことから、運動栄養療法の効果にも酪酸産生菌が関連することを想定していた。しかし、現時点では運動栄養療法の治療効果に酪酸産生菌の関連性が見いだせていない。一方でアミノ酸合成に関する遺伝子量に変化が認められた。当初の予定ではR3年度はPrevotella属を中心とした酪酸産生菌が運動能力、骨格筋へ与える影響についての基礎研究を行う予定であったが、実験計画を変更し、運動栄養療法の効果に関連する腸内細菌叢の同定を優先させている。計画内容の変更を行ったが研究自体は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度の結果から、アミノ酸合成に関連する腸内細菌叢が運動栄養療法の効果に関連する可能性が示されたことから、アミノ酸濃度と運動栄養療法の効果との関連性について、保存検体を用いて検討を行う。当初想定していたPrevotella属などの酪酸産生菌は現時点で運動栄養療法の効果に関連する細菌叢として検出されていない。しかし、既報からは酪酸産生菌はサルコペニアに対して重要な細菌叢であると考えている。運動栄養療法の症例数を増やして検討を行いつつ、R5年度に行う予定だったヒトを対象とした酪酸産生菌をターゲットとしたプレバイオティクスを加えた運動栄養療法の開発も併せて行い、その結果を踏まえてメカニズム解析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたメカニズム解析に先行してヒトを対象とした研究を行っているため、R3年度の予定使用額が想定よりも低く、次年度持ち越しとなった。本年は持ち越しとなった予算を用いて、保存検体を用いた解析を行う予定である。
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