研究実績の概要 |
これまでに、OSMRの受容体であるgp130は、免疫細胞の増殖分化に関与しているIL-6ファミリーサイトカインの受容体の共通コンポーネントであり、 そのシグナル伝達は,gp130細胞内領域に結合するチロシンキナーゼJAKが必須であることが明らかとなってる。gp130はこれまでに癌細胞の増殖や肝臓の肥大等の役割が示されてきたが、骨格筋における役割は明らかとなっていない。 本研究では、骨格筋細胞(C2C12)を用いて、オンコスタチンM受容体(OSMR)のgp130をshRNAによりノックダウンし、インスリン添加後のPI3-kinase-Aktの糖代謝調節経路と糖取り込み速度を測定し、OSMR欠損がインスリン刺激による糖代謝調節経路への影響を検討した。その結果、OSMR欠損により培養液中のOSM濃度が増加し、また、インスリン添加したOSMR欠損細胞において、OSMR下流シグナルのSTAT3リン酸化、 Aktのリン酸化活性、PI3-kinase活性が正常の細胞にインスリン添加した群よりも抑制することが明らかとなった。また、糖取り込みに関しても同様に、インスリン刺激により正常の細胞は有意に増加したが、OSMR欠損の骨格筋細胞においては、インスリン刺激による骨格筋の糖取り込みの増加は抑制されることが明らかとなった。gp130を骨格筋細胞で欠損することで、培養液中(血中)でのOSM濃度が増加し、さらにIL-6の酸性が抑制されることで、インスリンによる骨格筋糖代謝調節経路の活性が抑制される可能性が示唆された。これらの結果から、インスリン抵抗性の新たな指標として血中のOSM濃度が有効である可能性が示唆された。
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